個人投資家の主流は、ETFになりつつあります。特に長期投資であれば、お手軽に分散投資ができるETFこそ安心して資産を預けられる存在ではないでしょうか。
ETFは性質上、運用額が大きいほど有利になるので、世界の投資マネーが集まる米国のETFが頭一つ二つ抜けて優秀です。日本国内にもETFはありますが、米国ETFの方が圧倒的に魅力的。
ですが投資初心者は、米国ETFにどんな銘柄があって、どのように選べば良いか、さっぱりわからないですよね。わたし自身も最初はチンプンカンプンで、偏った銘柄しか知りませんでした。
この記事では、
- 米国ETFの魅力はどこにあるか?
- あなたに合ったETFの選び方
- 日本でも大人気なド定番の米国ETF
- 米国ETFに投資する上で避けられない問題
を解説しています。
ここで紹介されている銘柄だけでも立派なポートフォリオが作れます。米国ETFに興味があるけど、銘柄選びに悩んでいる人は、ぜひ最後までチェックしてみてください!
なお本記事は、米国株投資の初心者に、まずは米国ETFの全体像を知ってもらうことを目的としています。そのため全体的に広く浅い内容に留めています。
米国ETFの2つの魅力
もし米国ETFと全く同じものが国内で買えるなら、わざわざ好き好んで外国の株なんて買わないですよね。
それでも日本人投資家に米国ETFが人気なのは、圧倒的な魅力があるから。ざっくり次の2つが、わたしが米国ETFが優れていると思う理由です。
米国ETFの魅力
- 圧倒的な規模のメリット
- 「あったら良いな」が見つかる層の厚さ
魅力①:圧倒的な規模のメリット
米国(というより世界)のETF運用会社には、「ブラックロック」「バンガード」「ステートストリート」の3人の巨人がいます。
彼らの運用規模は尋常じゃなく、それぞれ次の通り。ちょっと意味がわからないくらいの規模感になっています。
運用会社 | 創業年 | 運用総額(米ドル) | 運用総額(円換算) |
ブラックロック | 1988 | $9.49兆 | 1,044兆円 |
バンガード | 1975 | $7.2兆 | 792兆円 |
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ | 1978 | $3.05兆 | 336兆円 |
*2021年9月時点。1ドル=110円換算
この圧倒的な数の暴力は、多くの副次メリットを生み出します。
経費率が超低コストに
ETFの運用は、運用金額が大きかろうが小さかろうが、労力はさほど変わりません。となれば、運用金額が大きいほど、顧客1人当たりからもらう手数料は安くなるのが道理です。
結果として、最安クラスの米国ETFは経費率が年0.03%。100万円投資しても年間300円しかかかりません。日本ではどんなに安くても0.1%で、1%くらいも普通にあります、
流動性が高く、売買に困らない
運用金額が大きいということは、日々の出来高も大きく、たくさんの投資家が売買に参加しているということです。
この状態を「流動性が高い」と表現します。流動性が高い米国ETFであれば、売買に困るような状況はまずあり得ません。
流動性が低いと、買いたいときに売り手が見つからず、思ったより高い価格でないと買えない場合があります。売りたいときに買い手が見つからず、思ったより安い価格でないと売れないかもしれません。
繰上償還のリスクが低い
ETFの運用期間は無期限になっていますが、途中で運用を中止して、強制的に返金になる「繰上償還」のリスクがあります。
意図しないタイミングで時価で返金されるので、市況によっては大損しかねません。また次の投資先を探さなければなりませんが、タイミングが良いとも限りません。
基本的には人気がないファンドが繰上償還になるので、運用金額が大きいファンドほど、そのリスクは低くなります。
魅力②:「あったら良いな」が見つかる層の厚さ
国内ETFは欲しいものが見つかることの方が少ないですが、米国ETFは欲しいものが見つからない方が珍しいです。米国ETFだけで、十分ポートフォリオを組めてしまいます。
ETFは株式の形で売買することになるのですが、中身は株式に限りません。債券でも、金でも、不動産でも、市場で取引されるものなら、大抵はETFで調達できます。
切り口は、国や地域、セクター、ベータ(≒値動きの激しさ)、格付け、残存期間、などなどバラエティに富んでいて、「こんな商品まであるのか」と本当に感心させられます。
ETFを選ぶときの3つのポイント
米国ETFは、いろんなメディアで銘柄が紹介されているので、どれを選べば良いのかわからなくなってしまいます。
ですが、見るべきポイントはそんなに多くありません。最低限、次の3点を見れば、欲しい銘柄が見つかると思います。
ETFの銘柄選びのポイント
- 先にアセットアロケーションを決めておく
- なるべく分散されているものを選ぶ
- 「経費率」と「純資産総額」が優位なETFを選ぶ
それぞれカンタンに解説します。
ポイント①:先にアセットアロケーションを決めておく
投資のリターンは、個別銘柄ではなく、「アセットアロケーション」でほとんど決まってしまいます。個別銘柄の選択は、アセットアロケーションに比べれば瑣末な問題なのです。
アセットアロケーションとは、「米国株」とか「米国債」とか「新興国株」といった大きな括りが、資産に占める割合のこと。投資の目標金額や、それを達成するための時間軸、リスク許容度によって、アセットアロケーションは変わってきます。
リスク度外視で、とにかくリターンを最優先にするなら、100%米国株に充てるのも良いでしょう。資産を減らさないことに眼中を置くなら、債券の比率が多めになります。
取り組む順番は、
- 投資の目標を決める
- アセットアロケーションを決める
- 銘柄(ETF)を選ぶ
となります。
まだ決めていない人は、アセットアロケーションの決め方の解説記事も参考にしてみてください。無料で使える便利な分析サイトも紹介しています。
ポイント②:なるべく分散されているものを選ぶ
ETFのコンセプトは分散投資。個別銘柄の業績ではなく、その業界の未来や、その国の経済といった、マクロな視点で投資するための手段です。
基本的には、なるべく多くの銘柄に投資できるETFを選ぶのが定石です。分散するほど、リスクがなだらかになり、リターンが市場平均に近づくようになります。
ただし、必ずしも数だけ多ければ良いとは限らない
基本的には、含まれる銘柄数が多いETFを選ぶべきではありますが、銘柄が多いほどいろんな属性の銘柄がごちゃ混ぜになってきます。
アセットアロケーションで決めた各資産クラスの割合がズレてしまったときに、元の比率に再調整できる程度には、区分しておくのがよいでしょう。
例えば「全世界株式」は8,000銘柄に分散投資できる優れた商品ですが、新興国の割合を減らしたいとか、小型株を増やしたいとか、そういったコントロールが効きません。
ここはアセットアロケーション次第で、単に「世界中の株式に50%」という決めになっているなら全世界株式でOK。「新興国株は20%、米国の小型株が5%」のように、細かめに決めている場合は、全世界株式はNGです。
ポイント③:「経費率」と「純資産総額」が優位なETFを選ぶ
同じようなETFであれば、経費率の低く、純資産総額が大きい方を選びましょう。基本的には、経費率が最も小さいものを選べばOKです。
ただ純資産総額が小さいと、流動性が下がって、売買がしづらくなってしまいます。1番大きな規模である必要はありませんが、1番大きなETFとかけ離れていない方がベターです。
いざETFを物色する時ですが、純資産総額が多いほど経費率は下がるので、各資産クラスで規模が大きいETFから探すのがラクです。
米国株(インデックス系)のETF
米国ETFで特に人気があるのが「米国株式」に投資するETFです。切り口によって幾つかの種類に分岐するので、代表的なものを紹介していきます。
世界の株式市場の時価総額のうち、米国株が占める割合は5割超。となれば、ポートフォリオの大きな割合が米国株になるのは必然と言えるでしょう。
S&P500に連動する「SPY・IVV・VOO」
米国ETFで最も人気なジャンルが、米国の代表的な株価指数である「S&P500」に連動するものです。米国を代表する500社に分散投資できます。
S&P500は、米国の全上場企業の時価総額のうち上位80%を占めるので、ほぼアメリカに丸ごと投資していることになります。
暗黙のうちに、「株式のリターン=S&P500のリターン」とすることが非常に多く、ETFを選ぶ際は、S&P500系のETFを基準に比較するのがよいでしょう。
運用会社 | ステートストリート | ブラックロック | バンガード |
商品名 | SPDR S&P 500 ETF | iシェアーズ・コア S&P 500 ETF | バンガード・S&P 500 ETF |
ティッカー | SPY | IVV | SPY |
ベンチマーク | S&P500 | S&P500 | S&P500 |
投資対象 | S&P500の500社 | S&P500の500社 | S&P500の500社 |
配当利回り | 1〜2%程度 | 1〜2%程度 | 1〜2%程度 |
経費率 | 0.09% | 0.03% | 0.03% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 | 3月・6月・9月・12月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約4,000億ドル | 約3,100億ドル | 約7,800億ドル |
設定日 | 1993/1/22 | 2000/5/15 | 2010/9/7 |
*SPY参考サイト:ステートストリートHP
*IVV参考サイト:ブラックロックHP
*VOO参考サイト:バンガードHP
最も歴史が古いのは「SPY」。ただ後発の「IVV」「VOO」の方が、経費率が低くなっています。これから投資をする人は、「IVV」か「VOO」を選ぶのが良いでしょう。
S&P500には100年以上の歴史があり、年平均リターンは+10%ほどで、インフレ率を考慮しても+6〜7%にもなります。インデックスとしては十分すぎるリターンでしょう。
間違いない選択肢ですが、これらのETFに投資をするならS&P500がどう算出されていて、どのように銘柄が選定されているのか知っておきたいところ。
ぜひS&P500の解説記事も一緒にチェックしてみてください。
全米株式「VTI」
S&P500は全米から厳選された大企業500社で構成されている一方で、全米には4,000社程度の上場企業があります。
全米の4,000社に丸ごと投資できるのが、全米株式インデックスの「VTI」です。S&P500に含まない中小型株も含んでいて、「米国を丸ごと買えるETF」となっています。
運用会社 | バンガード |
商品名 | バンガード・トータル・ストック・マーケットETF |
ティッカー | VTI |
ベンチマーク | CRSP USトータル・マーケット・インデックス |
投資対象 | 全米の上場企業約4,000社 |
配当利回り | 1〜2%程度 |
経費率 | 0.03% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約1.3兆ドル |
設定日 | 2001/5/24 |
*参考サイト:バンガードHP
一般的に、大型株よりも中小型株の方がハイリスク・ハイリターンです。財務基盤が弱い代わりに、伸び代が大きいからですね。故に「VTI」のリターンは、S&P500よりもほんの少し高い傾向があります。
「VTI」はリターンの上でも、分散投資の意味でも最高クラスの選択肢でありながら、経費率は最安クラスとなっています。
大型株と中小型株の割合を調整したいなど、特別な事情がない場合は、S&P500系のETFよりも「VTI」をオススメします。
「VTI」と「S&P500」のどちらに投資するかを解説した記事もチェックしてみてください。
NASDAQ100に連動する「QQQ」
米国の株式は、「ニューヨーク証券取引所(NYSE)」と「NASDAQ(ナスダック)」という二大市場に分かれています。
NASDAQは、伝統的にハイテク銘柄が集まる株式市場となっていて、そんなNASDAQの上位100社で構成された株価指数が「NASDAQ100」です。
そして「NASDAQ100」に投資できるETFの決定版が「QQQ」です。運用会社のインベスコは、BIG3に次ぐ業界4位の規模です。
運用会社 | インベスコ |
商品名 | インベスコ QQQ 信託シリーズ |
ティッカー | QQQ |
ベンチマーク | NASDAQ100 |
投資対象 | NASDAQ市場の時価総額上位100社 |
配当利回り | 0.5%〜1%程度 |
経費率 | 0.20% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約2,000億ドル |
設定日 | 1999/3/10 |
*参考サイト:インベスコHP
NASDAQ100には、株式市場全体を牽引してきた「GAFAM」や「Tesla」「NVIDIA」なんかが含まれています。
グロース株(成長株)と呼ばれる株価が特に伸びている銘柄が多くラインナップされており、好況期においては、S&P500を軽く超えるリターンを叩き出しています。
グロース銘柄の企業は、事業で稼いだお金をさらに事業に再投資するので、配当はほとんどありません。もっぱらキャピタルゲイン(値上がり益)を狙う投資になります。
ラッセル2000(小型株)「IWM」
「ラッセル2000」は、米国の小型株を対象とする株価指数です。
米国に上場している銘柄のうち、時価総額の1001位〜3000位の計2,000社で構成されています。ラッセル2000で、全米の時価総額の大体10%を占めています。
そんなラッセル2000に投資できるETFで最も人気があるのが「IWM」です。
運用会社 | ブラックロック |
商品名 | iシェアーズ ラッセル 2000 ETF |
ティッカー | IWM |
ベンチマーク | ラッセル2000指数 |
投資対象 | 米国の時価総額1001〜3,000位の2,000社 |
配当利回り | 1%前後 |
経費率 | 0.19% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約700億ドル |
設定日 | 2000/5/22 |
*参考サイト:ブラックロックHP
小型株は伸び代がありつつも、財務基盤が弱いので、景気の変動をより受けやすくなります。好況期はS&P500以上のリターンを期待できますが、不況期はS&P500に劣後するでしょう。
というわけで、S&P500よりもハイリスク・ハイリターンな選択肢です。また銘柄数では分散はされているものの、米国経済そのものを象徴しているわけではありません。
ポートフォリオのメインに据えるのではなく、一部に留めるタイプの銘柄でしょう。
米国株(配当系)のETF
米国株のETFの中でも、一定の人気があるのが「インカム系」と呼ばれる配当にフォーカスした銘柄達です。高めの現金配当が魅力で、日本人には特に人気がある印象です。
この手のETFは、インデックスのように株価指数をそのまま使うのではなく、配当なら配当という色眼鏡で調整した、特殊な指数に連動するように設計されています。
この手の独自の指数に連動させる銘柄を「スマートベータ」と呼び、配当系のスマートベータは人気があるジャンルです。ただインデックスに負ける可能性が高いので、現金が必要な人だけ使いましょう。
高配当ETF「VYM・HDV・SPYD」
高配当ETFと聞いてまず思い浮かべるのは「VYM・HDV・SPYD」の3つです。
おそらく高配当ETFに投資している人のほとんどは、この3つのうちのどれか、またはこの3つの組み合わせで投資しているかなと思います。
運用会社 | バンガード | ブラックロック | ステートストリート |
商品名 | バンガード・米国高配当株式ETF | iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF | SPDR ポートフォリオS&P500 高配当株式ETF |
ティッカー | VYM | HDV | SPYD |
ベンチマーク | FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス | モーニングスター配当フォーカス指数 | S&P 500 High Dividend Index |
投資対象 | 米国で配当利回りが高い約400銘柄 | 米国で配当利回りが高い約75銘柄 | S&P500に含まれる企業で配当利回りが高い約80銘柄 |
配当利回り | 3%前後 | 3〜4%程度 | 4〜5%程度 |
経費率 | 0.06% | 0.08% | 0.07% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 | 3月・6月・9月・12月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約490億ドル | 約75億ドル | 約50億ドル |
設定日 | 2006/11/16 | 2011/3/29 | 2015/10/21 |
*VYM参考サイト:バンガードHP
*HDV参考サイト:ブラックロックHP
*SPYD参考サイト:ステートストリートHP
単純に配当を狙うならSPYDですが、株価の値上がりまで考慮したトータルリターンはVYMに軍配が上がります。リスクを抑えつつ、配当もそこそこ欲しければHDVが良いかと。
この3つが特に人気な理由は、高い配当を得つつ、(インデックスほどではないが)株価の値上がりまで期待できるところ。他の高配当銘柄は、株価の値上がりまでは期待できないものが多いので。
横並びで語られることが多いのですが、その中身は結構違っています。もっと詳しい内容は「【大解剖】高配当ETF「VYM・HDV・SPYD」を徹底比較!」へどうぞ。
連続増配株「VIG」
「VIG」は厳密には高配当ETFではないのですが、配当をテーマにしたスマートベータETFの中では1番人気の銘柄です。
運用会社 | バンガード |
商品名 | バンガード・米国増配株式ETF |
ティッカー | VIG |
ベンチマーク | NASDAQ US Dividend Achievers Select Index |
投資対象 | 最低10年間の連続増配実績がある約247銘柄 |
配当利回り | 1.5〜2.5%程度 |
経費率 | 0.06% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約750億ドル |
設定日 | 2006/4/21 |
*参考サイト:バンガードHP
VIGは10年以上増配し続けている企業で構成されたETF。増配とは、配当金を増やすということです。
本来の株式は、企業が儲けたお金を配当として株主に配るための仕組みです。そういう意味では、「健全な企業=増配し続けている企業」と言えるかもしれません。
現時点では配当が多いとはお世辞にも言えませんが、将来は高配当株になっている可能性が高そうです。
配当目当ての投資をしたい人は、高配当系ETFの一覧記事もチェックしてみてください。株式ETFだけでなく、ジャンク債や優先株などなど、色々と紹介しています。
なかなかマニアックな銘柄もあるので、思わぬ出会いがあるかもしれません。
米国以外の株式(インデックス系)のETF
米国以外に投資する場合でも、米国ETFは非常に魅力的な商品を取り揃えています。
ちなみに「米国オンリーで投資するか」「世界中の国に分散投資するか」は、投資家によって意見が真っ二つに分かれるところ。
わたし自身は米国を中心としつつも、国も分散させたい派です。わたしのような人は、米国以外の国にも投資できるETFを併用しましょう。
全世界株式「VT」
全世界の時価総額の上位98%(つまりほとんど!)にいっぺんに投資できるのが、全世界株式「VT」です。銘柄数は約8,000と圧倒的で、株式ETFの中でもっとも分散されたポートフォリオを持っています。
全世界の経済成長にベットするETFであり、「これ一本買っておけばOK」という感じが人気の秘訣となっています。
運用会社 | バンガード |
商品名 | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF |
ティッカー | VT |
ベンチマーク | FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス |
投資対象 | 先進国&新興国市場の大型・中型・小型株(時価総額上位98%) |
配当利回り | 1.5〜2.5%程度 |
経費率 | 0.08% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約330億ドル |
設定日 | 2007/7/20 |
*参考サイト:バンガードHP
「VT」は基本的には超優秀なETFと思って間違いないのですが、注意が必要な点があります。
全世界と言いつつも、他のインデックスと同様に、時価総額が大きい銘柄ほど割合が大きくなるので、結果的に半分以上は米国株です。パフォーマンスは、米国株の成績でほぼ決まってしまいます。
全世界に投資する人は、新興国の伸びに期待していると思いますが、現状は新興国の割合は10%程度。新興国の株式が+50%爆上がりしても、「VT」のパフォーマンスでは+5%にしかなりません。
なが〜い目で見れば、新興国のリターンも享受できますが、成長過程でのリターンの実感はほとんどないと思われます。
加えて各国の割合は、世界の株式市場の成り行きで決まるので、自身ではコントロールできません。投資先国の割合を調整したい場合は、「VT」は使わないようにしましょう。
全世界の「VT」と、米国株オンリーのどちらを選ぶべきかを解説した記事も参考にしてみてください。悩ましい選択ですが、明確な選び方を解説しています。
米国を除く先進国株式「VEA」
「VEA」は、米国を除く先進国に投資するETFです。本来は、すでに米国株に投資をしているアメリカ人が、他の先進国に投資をするときに使う選択肢です。
日本人向けのETFでも、日本以外の先進国に投資できる銘柄があり、同じようなコンセプトの商品となっています。
運用会社 | バンガード |
商品名 | バンガード・FTSE先進国市場(除く米国)ETF |
ティッカー | VEA |
ベンチマーク | FTSE先進国オールキャップ(除く米国)インデックス |
投資対象 | 米国を除く先進国市場の大型・中型・小型株(時価総額上位98%) |
配当利回り | 2.5〜3.5%程度 |
経費率 | 0.05% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約1,600億ドル |
設定日 | 2007/7/20 |
*参考サイト:バンガードHP
米国では超々人気銘柄ですが、日本ではさほど名前を聞かない銘柄です。
一見すると、米国が抜けた先進国に投資する意味は、ほとんど無いように感じるかもしれません。ですが「VEA」は、我々日本人投資家にも大いに活用できるETFです。
例えば、米国株を中心に他の国にも投資したいけど、新興国は信用できない人は、「VTI + VEA」でポートフォリを組みます。
または、米国以外の先進国にはあまり期待できない人は、「VTI + VEA + VWO」でポートフォリオを組んで、VEAを少なめにしておけばOKです。
「VTI・VEA・VWO」の組み合わせのメリットを解説した記事も参考にしてみてください。個人的には、「VT一本」よりこちらの方がメリットが大きいと思います。
新興国株式「VWO」
新興国にマルっと投資できるETFが「VWO」です。
新興国株は、今後著しい経済成長が期待できるにもかかわらず、しばらく割安のままになっています。「VWO」は投資妙味の塊と言えるかもしれません。
ただ未成熟な国には付き物の「カントリーリスク」を敬遠する投資家が多いので、新興国の株価は必ずしも高い経済成長とはリンクしません。とは言え、どこかで爆発するポテンシャルは秘めています。
運用会社 | バンガード |
商品名 | バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF |
ティッカー | VWO |
ベンチマーク | FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)インデックス |
投資対象 | 新興国市場の大型・中型・小型株(時価総額上位98%) |
配当利回り | 2〜3%程度 |
経費率 | 0.10% |
分配月 | 3月・6月・9月・12月 |
純資産総額 | 約1,100億ドル |
設定日 | 2005/3/4 |
*参考サイト:バンガードHP
基本的には、新興国に投資をしようと思ったら、「VWO」だけ買っておけばOKです。ただし知っておかなければならないのは、全体の4割程度は中国ということ。
中国が世界の覇権を握るシナリオはありつつも、中国政府の力が強すぎるので、我々投資家に不利な沙汰が下る可能性は十分にあります。そしてその強権を止められる存在は世界のどこにもいません。
中国に限らず、新興国には同種のリスクがあります。単に中国は規模が大きいから目立つだけ。アンコントローラブルさを抱えたETFなので、ポートフォリオのメインに据えるのはリスクが高いでしょう。
「VWO」の個別解説記事も参考にしてみてください。
債券ETF
債券の基本的な使い方は、株式と組み合わせて、ポートフォリオ全体の値動きをマイルドにすること。債券は元本と利子の金額が発行時点で決まっているため、価格が上にも下にも変動しづらい特徴があるからです。
株式ばかりフォーカスが当たって、あまり注目されてない感がある債券ですが、個人的には債券こそ米国ETFがオススメ。国内の債券ETFとは種類の多さが段違いで、丁度良い塩梅の銘柄が必ず見つかります。
債券は簡単に言えば「利子付きの借金手形」なのですが、実は奥深い世界です。国債や社債、新興国債など、多種多様な商品がありますが、周辺知識がないと選ぶのに苦労します。
債券の基本的な仕組みを調べたことがない人は、債券基礎知識の記事もチェックしてみてください。
米国総合債券「AGG・BND」
債券ETFで最もメジャーなのが「AGG」と「BND」です。米国の投資適格債券(BBB以上)に丸っと投資できるETFです。
「これで損するなら、どう足掻いても損したんじゃないかな?」と思える、信頼できる銘柄。「迷ったらこれ」という感じです。
運用会社 | ブラックロック | バンガード |
商品名 | iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF | バンガード 米国トータル債券市場ETF |
ティッカー | AGG | BND |
ベンチマーク | ブルームバーグ・バークレイズ米国総合 インデックス | ブルームバーグ・バークレイズ米国総合浮動調整インデックス |
投資対象 | 米国の投資適格債券 | 米国の投資適格債券 |
配当利回り | 1.8〜3%程度 | 1.8〜3%程度 |
格付け | 主にAAA(最低でBBB) | 主にAAA(最低でBBB) |
平均残存年数 | 8.28年 | 8.6年 |
デュレーション | 6.55年 | 6.8年 |
経費率 | 0.04% | 0.035% |
分配月 | 毎月 | 毎月 |
純資産総額 | 約890億ドル | 約320億ドル |
設定日 | 2003/9/22 | 2007/04/03 |
*AGG参考サイト:ブラックロックHP
*BND参考サイト:バンガードHP
どちらも米国のあらゆる投資適格債券に投資しているので、国債も社債も入ってきます。国債とMBS(住宅ローン証券)で約半数を占めているので、かなり信用の高い債券が中心。
中身に少し差異はありますが、ほとんど同じ商品と思って差し支えありません。
両ETFの詳細は、「AGG」と「BND」の比較記事で解説しています。
長期米国債「TLT」
「TLT」は米国債の中でも特に長い、残存期間20年超を対象にしたETFです。
残存期間が長いほど利回りは上がるので、米国債の中では高めの利回りとなっています。ただし格付けが高いので、社債や新興国債に比べれば見劣りします。
運用会社 | ブラックロック |
商品名 | iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF |
ティッカー | TLT |
ベンチマーク | IDC US Treasury 20+ Year Index (4PM) |
投資対象 | 残存期間20年超の米国債 |
配当利回り | 1.4〜3%程度 |
格付け | AAA |
平均残存年数 | 26.04年 |
デュレーション | 18.89年 |
経費率 | 0.15% |
分配月 | 毎月 |
純資産総額 | 約170億ドル |
設定日 | 2002/7/22 |
*参考サイト:ブラックロックHP
「TLT」の特徴は、デュレーション(≒残存期間)が非常に長いこと。そのため安全な債券の割には大きく値動きします。債券なのにキャピタルゲインまで狙えてしまう銘柄です。
不況時には株式とは逆に、大きく値上がりする傾向があるので、資産防衛機能が非常に高いのも特徴。逆言えば、好況期には値下がりしやすいのですが、ここも捉え方次第です。
株式と組み合わせることで、好況期は株式が資産を伸ばし、不況時は「TLT」が資産を支えるという、うまい具合に噛み合ったポートフォリオを作れるでしょう。
詳しくは、「TLT」の解説記事をチェックしてみてください。期間の違う米国債ETFである「IEF」「SHY」と比較して、期間の長さがどう影響するかもわかりやすく解説しています。
投資適格社債「LQD」
「LQD」は、投資適格と評価された「BBB」の社債を中心に投資するETF。社債ジャンルのETFでは、トップクラスに高い純資産総額を誇る大人気銘柄となっています。
運用会社 | ブラックロック |
商品名 | iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債 ETF |
ティッカー | LQD |
ベンチマーク | Markit iBoxx米ドル建てリキッド 投資適格指数 |
投資対象 | 米ドル建ての投資適格社債 |
配当利回り | 2.4〜4%程度 |
格付け | BBB、次いでAが中心 |
平均残存年数 | 13.78年 |
デュレーション | 9.69年 |
経費率 | 0.14% |
分配月 | 毎月 |
純資産総額 | 約430億ドル |
設定日 | 2002/7/22 |
*参考サイト:ブラックロックHP
「LQD」は、BBB格が約半数で、ついでA格が大きい割合を占めています。投資適格ではありつつも、高すぎない格付けになっているため、米国債よりも高い利回りを期待できます。
残存期間が10年長と長めなので、値動きはボチボチあります。暴落相場では株式と同じように値下がりする傾向がありますが、株式と比べればはるかに早く回復しています。
詳細は、「LQD」の解説記事をチェックしてみてください。
債券ETFは粒ぞろいで、他にも良い銘柄がたくさんあります。債券の定番ETFの一覧記事もチェックしてみてください。
コモディティ系のETF
コモディティとは、実物があり、現に消費される商品のことです。原油などのエネルギー、金銀プラチナなどの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物、家畜など、さまざま種類があります。
株式&債券の二大資産クラスとは別の値動きするため、分散投資に使えます。加えて、インフレリスクに強いというメリットがあり、できればポートフォリオに入れておきたいところ。
ETFなら投資初心者でも簡単にコモディティにアクセスできるのでオススメです。基本的には配当がないので、もっぱらキャピタルゲイン狙いになります。
総合コモディティ「DBC・GSG」
コモディティの世界にもたくさんの種類があり、それぞれがそれぞれの事情で価格が変動します。慣れている人でなければ、コモディティの動向までキャッチアップするのは難しいように感じます。
そんな人には、主要なコモディティのジャンルに丸っと投資できるETFが良いでしょう。
運用会社 | インベスコ | ブラックロック |
商品名 | インベスコ DB コモディティ インデックス トラッキング ファンド | iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト |
ティッカー | DBC | GSG |
ベンチマーク | ドイチェバンク高流動性商品指数 | S&P GSCI(R) Total Return Index |
投資対象 | エネルギー・貴金属・工業用金属・農作物 | エネルギー・貴金属・工業用金属・農作物・家畜 |
配当利回り | 市況により変わる | 0% |
経費率 | 0.85% | 0.85% |
分配月 | 12月(無い年もある) | なし |
純資産総額 | 約25億ドル | 約13億ドル |
設定日 | 2006/2/3 | 2006/7/10 |
*DBC参考サイト:インベスコHP
*GSG参考サイト:ブラックロックHP
どちらも総合コモディティETFとして人気がある銘柄です。
コモディティETFの中では定番ですが、ETF全体ではマニアックな部類かもしれません。他で紹介しているETFより純資産総額もずいぶん小さめとなっています。
金(GOLD)「GLD・GLDM・IAU」
コモディティの中で、最も人気があるのが「金」です。「金」は数千年もの長きにわたり「富」そのものとして扱われてきた歴史があり、無国籍の通貨のような存在でもあります。
「金」は限りある資源で、耕せば採れるような類のものではありません。この先に供給量がほとんど増える見込みがないことからも、「金」の価値は、他のコモディティに比べ安定しています。
コモディティ投資の最優先は「金」で、多くの人は「金」だけで事足りるかもしれません。現物(延棒とか金貨)を買う選択肢もありますが、あくまで投資としてならETFで十分です。
運用会社 | ステートストリート | ステートストリート | ブラックロック |
商品名 | SPDR ゴールド・シェア | SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト | iシェアーズ ゴールド・トラスト |
ティッカー | GLD | GLDM | IAU |
ベンチマーク | 金現物の価格 | 金現物の価格 | 金現物の価格 |
投資対象 | 金 | 金 | 金 |
配当利回り | 0% | 0% | 0% |
経費率 | 0.40% | 0.18% | 0.25% |
純資産総額 | 約580億ドル | 約45億ドル | 約290億ドル |
設定日 | 2004/11/18 | 2018/6/26 | 2005/1/21 |
*GLD参考サイト:ステートストリートHP
*GLDM参考サイト:ステートストリートHP
*IAU参考サイト:ブラックロックHP
歴史的に「金」は、それそのものに価値があるとされているので、相場が暴落してもあまり価格が下がりません。
(あらゆる意味での)世界的な危機で、株や債券などのペーパーアセットに不安が募った時は、投資マネーが「金」に流入します。そんなわけで「有事の金」と呼ばれたりします。
「金」のETFは、他のコモディティジャンルに比べ圧倒的に規模が大きいので、経費率は比較的良心的になっています。
歴史が古く規模が大きいのは「GLD」ですが、これから投資をする人は、経費率が低い「IAU」「GLDM」で良いかと。規模or経費率のどちらを優先するかで選びましょう。
「金」の詳細は金投資の解説記事をチェックしてみてください。配当がないからと敬遠する人が多いのですが、その理由だけで投資しないのはもったいないかなと思います。
【認識しておこう】米国ETF投資の3つの注意点
米国ETFは非常に魅力的な選択肢ですが、全てにおいて日本株を勝っているわけではありません。代表的なものは次の3つです。
米国ETFに投資する際の注意点
- 国内株式より手数料がかさむことが多い
- 配当が二重課税になっている(確定申告で取り戻せる)
- 為替リスクがある
個人的には飲み込めるレベルの話ではありますが、後から知るとショックを受けるかもしれないので、あらかじめ認識しておきましょう。
注意点①:国内株式より手数料がかさむことが多い
ネット証券だと、国内株式は売買手数料が無料のケースが多くなってきました(一定金額以内の取引に限りますが)。
一方で米国ETFは、外国株の扱いになり、基本的には金額によらず売買手数料がかかります。加えて、米国ETFは米ドルで売買するので為替手数料もかかってきます。
国内ETFには、米国ETFのような魅力的な商品が少なく、経費率も割高。トータルで考えると米国ETFの方が魅力的ですが、事実として売買時の手数料は高めになると認識しておきましょう。
注意点②:配当が二重課税になっている(確定申告で取り戻せる)
国内株式、外国株式にかかわらず、配当金は、勝手に税金を徴収された上で投資家に支払われるます。
米国ETFの場合は、米国で10%、日本国内で約20%が徴収されており、都合約28%の税金が差っ引かれています。
日米の両国で二重課税になっており、本来は払わなくても良い税金が差っ引かれていることになります。二重課税になっている分は、確定申告をすれば取り返すことが可能です。
具体的な数字を出すと、もし年間100万円の配当があったとしたら、約28万円が源泉徴収され、あなたの手元に入ってくるのは約72万円です。確定申告をすると、二重課税になっている約8万円を取り戻せます。
年8万円の配当を得るためには、種銭が200万円程度必要です。そう考えれば、確定申告をしないことがどれだけ不利かわかりやすいかなと思います。
詳細は、「【米国株で損してない?】配当金の二重課税を「外国税額控除」で取り戻す方法」をチェックしてください。米国高配当ETFでは必須科目となっています。
注意点③:為替リスクがある
手数料や、配当の二重課税はぶっちゃけ大した話ではありません。本当に気にしなければならないのは為替リスクです。
米国ETFで+20%の利益が出たとしても、その間でドル円レートが-20%(つまり円高ドル安)になっていたら、差し引き利益は0になってしまいます。逆にドル高になっていれば、超過リターンを得られることの裏返しでもありますが。
米ドルは信用の高い通貨なので、新興国通貨に比べればはるかに為替リスクは低いです。それでも日米間の為替は結構変動があるので、円に換金するタイミングによっては利益が帳消しになる可能性は十分あります。
ポートフォリオを全部米国ETFにしてしまうのは、為替リスクの観点ではリスキー。理想を言えば、他の先進国の通貨建てのETF(円、ユーロなど)に分散するのが良いでしょう。
もしくは、ドル安のタイミングで円に換金しなくてもよいように、日本円を多めに持っておくか、生活費分の収入は維持できるようにしておくのが次善の策ですね。
銘柄を選んだらバックテストをしよう!
投資したい銘柄が見つかったら、ポートフォリオを作っていきましょう。
ただし、なんとなくポートフォリオを決めるのではなく、「バックテスト」で過去の実績から数字で良し悪しを判断するのが良いでしょう。
まず持ってリターンを測るのも大事ですが、不相応なリスクを取っていないかを確認するのも重要です。無料でバックテストができるサイトがあるので、使い倒しましょう!
バックテストのやり方を解説した記事を参考にしてみて下さい。