インデックス投資の長期投資を選んだ人は、短期トレーダーとは対局に位置しています。トレーダーが好んで使う「テクニカル分析」とは、距離をとった人種と言えるでしょう。
ただしそんな長期投資家でも、テクニカル分析が必要な場面が訪れます。まとまった資金を投資するときや、投資資産を取り崩すときは、どうしてもタイミングを選びます。
そういうときにテクニカル分析に疎い長期投資家は、タイミングがわからず四苦八苦してしまうでしょう。わたし自身、まとまった資金を突っ込んでみたものの、割高なときに買ってしまい後悔した経験があります。
この記事では、長期投資のためのテクニカル分析の活用方法を解説しています。FXや短期トレードで使うシーンが多いので、長期投資目線ではあまり語られることがないのではないでしょうか?
この記事で紹介しているテクニカル分析
- ローソク足
- 抵抗線・支持線
- 移動平均線
- MACD
- ボリンジャーバンド
- RSI
- ストキャスティクス
- VIX指数
- 恐怖・強欲指数
長期投資家であっても、いつかは大きな金額を売買する日が訪れるでしょう。そのときに少しでも損しないために、テクニカル分析の方法を押さえておきましょう!
テクニカル分析とは?
テクニカル分析とは、投資で高いパフォーマンスを出すための分析手法の1つ。
株式投資の分析方法は、
- テクニカル分析
- ファンダメンタル分析
の2流派に大きく分かれています。
テクニカル分析 | ファンダメンタル分析 | |
分析対象 | 過去のチャート | 企業の決算情報、ビジネスモデル、その他マクロ経済指標など |
投資/投機 | 投機 | 投資 |
向いている期間 | 短期 | 中長期 |
実践のしやすさ | 見るのがチャートだけなので、比較的実践しやすい | 見る指標が多く、高度な経済の知識が必要なので、より多くの学習が必要 |
投資家層 | 個人投資家 | 機関投資家 |
ファンダメンタル分析は、その企業の稼ぐ力に着目します。狙った企業の業績が上がり、その結果のリターンを得るので、真っ当な「投資」に当たります。
一方でテクニカル分析は、良くも悪くもチャートしか見ないので、その企業がなんのビジネスをしているかは関係ありません。チャートの動きにベットし、売買差益を狙う「投機」に当たります。
テクニカル分析って意味あるの?
テクニカル分析は全くのデタラメで、猿がトレードしても結果は変わらないという話もあります。ここに関しては方々で論争がありますが、全く無意味とは言えないでしょう。
なぜなら、短期投資は皆同じような分析手法を使っていて、同じような定石を信じてトレードをしているからです。「買いシグナル」が出て、投資家が一斉に買いに回れば、株価は本当に上がるのです。
もしかしたら、テクニカル分析の手法そのものに意味はないのかもしれません。ただ、そのテクニカル分析を信じている投資家が一定数いる以上は、テクニカル分析のシグナルは実現し得るのです。
短期のチャートは、トレーダーの心理によって動いている側面が強いと思われます。市場に短期投資家がいる限り、テクニカル分析には一定の効果があると考えられます。
長期投資こそテクニカル分析が向いている?
個人的には長期投資の方が、気楽にテクニカル分析のメリットを享受しやすいと思います。
理由は次の2つです。
- 長期投資ならダマシが少ない手法を取れる
- 長期投資ならもし負けても痛くない
それぞれ理由を見ていきますしょう。
理由①:長期投資ならダマシが少ない手法を取れる
テクニカル分析の弱点に「ダマシ」があります。ダマシとは、テクニカル分析の通りに相場が動かないシーンを指します。
ダマシの出やすさと、売買シグナルが出る速さは比例しています。いち早く売買シグナルを掴みたいなら、ダマシが多くなることに目を瞑らなければなりません。
投資期間が短い人ほど、売買シグナルを早く察知しなければなりませんが、長期投資であれば、ちょっとタイミングが遅れても痛くありません。大体安めで買えて、高めで売れれば、それ以上は望みません。
売買シグナルの遅れを許容できる長期投資家は、ダマシを減らせます。例えば代表的なテクニカル分析である移動平均線なら、平均に算入する日数を長く取ることで、ダマシを減らせるのです。
理由②:長期投資ならもし負けても痛くない
短期投資の場合は、テクニカル分析で負ければ損失になります。これから上がると思った株が下がってしまったら、損切りして資金を次の投資に回さなければなりません。
ですが、長期投資の場合は、もし読みが外れてもどうということはありません。特にインデックス投資であれば、20年30年と保有し続ければ、かなり高い確率で株価は上昇します。
もし間違って高値で掴んでしまったら、その時はヘコむかもしれませんが、長期で見れば一時の値動きなんて瑣末な話。20年後に振り返ったら、どこで買っても結局プラスになっているでしょう。
長期投資でも、より高いリターンを上げるためにテクニカル分析は有効ですが、読み違えたら開き直って忘れてしまえばOKです。
長期投資にテクニカル分析が使えるシーン
長期投資のメインは、月に一回、ある程度決まった金額を積み立てるドルコスト平均法。株価が割高なときは自然と少なめに、割安なときは自然と多めに購入できるので、基本的に負けはありません。
そんな長期投資でも、テクニカル分析が使えるシーンでも普通にあります。次のようなシーンです。
- ①まとまった資金を投資するとき
これから投資を始めるために、今まで貯まった貯金を一括投資する場合や、ボーナスなどの臨時収入を投資に回す場合が挙げられるでしょう。
- ②ポートフォリオを組み替えるとき
投資の方針が変わったとき。例えば、例えば、これまでインデックス投資をしていた人が、方針を変えて高配当株に資産を組み替えるようなシーンです。
- ③投資資産を取り崩すとき
結婚式や子供の学費などのライフイベントや、海外旅行に充てる人もいるでしょう。FIREした人であれば、定期的に生活費を引き出すことになります。
まとまった資金を投資する場合は、一括投資せずに、分割して積立投資にしたほうが安全ではあります。ただそうは言っても、複利を考えるとなるべく早く投資に回したいですよね。
そんなときはテクニカル分析で、なるべく直近安値のタイミングで買いたいものです。
投資資産を取り崩すときは、なるべく相場が高値をつけているタイミングで売りたいですよね。売り時を見定めたいときも、テクニカル分析が使えます。
テクニカル分析は「トレンド系」「オシレーター系」に大別される
そんなテクニカル分析には、大きく分けて2つの流派があります。それが「トレンド系」と「オシレーター系」です。
トレンド系 | オシレーター系 | |
使用目的 | 上昇、または下落のトレンドを発見し、その流れに乗る | 「買われ過ぎ」か「売られ過ぎ」を判断する |
順張り/逆張り | 順張り | 逆張り |
有効な相場 | トレンド相場 | レンジ相場 |
代表的な指標 | 移動平均線 | RSI |
MACD | ストキャスティクス | |
ボリンジャーバンド | サイコロジカルライン | |
一目均衡表 | RCI |
トレンド系は、その名の通りトレンドを発見するための分析指標です。
上昇トレンドを見つけたら、素直にそのトレンドに乗って買い注文を入れ、その後の値上がり益をゲットします。
逆に下落トレンドを見つけたら、そのままでは株価が下落するので、含み損を抱える前に売却します。もし買いたい銘柄があっても、下落トレンドを見つけたら一旦ストップしましょう。
オシレーター系は、今が「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を判断します。ちなみにオシレーターとは、「振り子」「振れ幅」という意味の英単語です。
株価が上がり過ぎていると見るや、「買われ過ぎているので、トレンドが変わって下がるのではないか?」と予測し、逆に売りを入れて利益確定します。
逆に株価が下がり過ぎているならば、「売られ過ぎているので、そろそろ反転して上がるだろう」と予測し、なるべく底値で買いを入れます。
相場に応じてトレンド系とオシレーター系を使い分ける
トレンド系とオシレーター系の指標は、今が「トレンド相場」なのか「レンジ相場」なのかで、使い分けるのが一般的です。
「トレンド相場」はその名の通り、チャートに上昇または下落のトレンドがある状態です。株式市場の場合は、全体の7割がトレンド相場と言われています。
「レンジ相場」は、価格が上がるでもなく下がるでもなく、一定の幅(レンジ)を行ったり来たりする状態です。「保ち合い相場」「ボックス相場」とも呼ばれます。
一般論として、トレンド系指標は「トレンド相場」に強く、「レンジ相場」に弱いと言われています。トレンド系指標を「レンジ相場」で使うと、売買シグナルが交互に出てしまい、どこで売買すれば良いのかわからなくなります。
逆にオシレーター系指標は、「レンジ相場」に強く、「トレンド相場」に弱いと言われています。オシレーター系指標を「トレンド相場」で使うと、売買シグナルが出っ放しになり、出始めで売買するとむしろ損してしまいがち。
今の相場がどちらの様相を呈しているかで、分析指標を使い分けましょう。
どちらかと言えばトレンド系指標がメインになるかと思います
長期投資でも使えるテクニカル分析7選
テクニカル分析は数多くありますが、長期投資で使うのにそんなにたくさん覚える必要はありません。
特に代表的な次の7つの指標から、せいぜい3つくらいを使えば十分でしょう。逆にいうと1つの指標だけだとダマシになることも多いので、3つ程度の指標を見比べるのが良いと思います。
【基本】
- ローソク足
- 抵抗線・支持線
【トレンド系】
- 移動平均線
- MACD
- ボリンジャーバンド
【トレンド系】
- RSI
- ストキャスティクス
また自分が使う分析指標は、必ず計算方法を頭に入れておきましょう。中身をわからずに、「閾値を超えたから買い!」「下回ったから売り!」としていると事故の元です。
各指標に個別記事のリンクを貼っています。使う場合は個別記事の計算方法もチェックしましょう!
1.ローソク足
ローソク足は、テクニカル分析の出発点になる超メジャー指標です。日足であれば、1日の「始値」「終値」「高値」「安値」を1本の棒(ローソク)で表現します。
これを時系列で並べたものが、ローソク足チャート。単に終値を繋げただけのラインチャートに比べ、4倍の情報量になっており、その形状には市場参加者の思惑が詰まっています。
ローソク足は、「陽線(ようせん)」と「陰線(いんせん)」の2つに大別されます。そして太い部分を「実線」と呼び、上下に出る細い線を「ヒゲ」と呼びます。
- 陽線:始値より終値が高かった
- 陰線:始値が終値より安かった
- 上ヒゲ:その日(日足なら)の高値
- 下ヒゲ:その日(日足なら)の安値
実線の長さや、ヒゲの方向と長さを見ることで、トレンドを見極めたり、トレンドの変調を掴みます。
ローソク足の代表的な売買シグナル
長い実線が出たら、その方向にトレンドが発生したと考えられます。実線が長い陽線である「大陽線」なら、「上昇トレンド=買い」です。
また上下のどちらかに長いヒゲが出たときは、逆方向への圧力が強くなっています。例えば下ヒゲが長い「下影陽線」は、買い圧力が強く、強気相場の予兆です。こちらも買いシグナルとなります。
ローソク足は形状によってさまざまな読み方があり、複数本のローソク足の組み合わせで判断する手法もあります。上記はほんの一例なので、より詳しい読み方はローソク足の解説記事をチェックしてみてください。
2.抵抗線(レジスタンスライン)と支持線(サポートライン)
抵抗線(レジスタンスライン)は、「上値抵抗線」とも呼ばれます。直近の2つ以上の高値を結んだ線で表現されます。値上がりしても、不思議とこの線で押し返されることが多くなります。
支持線(サポートライン)は、「下値支持線」とも呼ばれます。反対に2つ以上の安値を結んだ線で表されます。値下がりしても、この線まできたら反発があり、それより下がらないことが多いです。
どちらかの線をブレイクしたときはが売買シグナルになります。視覚的に見やすい指標なので、多くの投資家がチェックしています。
抵抗線と支持線の代表的な売買シグナル
「持ち合いは放れた方につけ」は、投資界隈に古くからある格言。抵抗線か支持線のどちらかにブレイクしたら、その方向にトレンドが発生するぞ、という意味です。
見方はシンプルで、次の通り。
- 上値抵抗線を上抜けた=上昇トレンド発生:買いシグナル
- 下値支持線を下抜けた=下落トレンド発生:売りシグナル
どちらかにブレイクしたときは、それまで拮抗していた「買い手のパワー」と「売り手のパワー」のバランスが崩れたことになります。
それまで相場に張っていた投資家以外に、大きな新勢力が入ってきたかのかもしれません。または好材料(または悪材料)になるニュースで、市場参加者のスタンスが変わったのかもしれません。
いずれにしても、潮目が変わったタイミングです。ブレイクした方向に順張りするのが吉となります。
ちなみに「トレンドライン」や「三角持ち合い」、次に紹介する「移動平均線」も、抵抗線・支持線として機能します。抵抗線・支持線の詳細記事で、各種バリエーションを解説しています。
3.移動平均線
「移動平均線(Moving Average)」は、トレンド系のテクニカル指標です。他のテクニカル分析の基礎にもなっているので、ほぼ全員必須で使って良いかと思います。
一般的には、一定期間の終値をつなぎ合わせます。5日移動平均線だったら、直近5日間の終値の平均をプロットしていきます。
移動平均線は、単に価格推移を視覚的にわかりやすくしただけの線なのですが、この線の動き方や交わり方によって、売り買いのタイミングを図ることができます。
通常は2〜3本の移動平均線を同時に使います。↓みたいな感じが多いかなと。
- 短期:25日、中期:50日、長期75日
- 短期:25日、中期:50日、長期100日
- 短期:50日、中期:100日、長期200日
短期投資ならもっと短い期間を取りますが、長期投資ならこの辺りで良いと思います。
移動平均線の代表的な売買シグナル
移動平均線の傾きは、そのままその銘柄の値動きの傾向を示しています。上り調子なら上昇トレンドで、落ち目なら下落トレンドです。まずはここを見るだけでも有効です。
具体的な売買シグナルになるのは、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」です。
- 短期の線が長期の線を上抜ける:ゴールデンクロス(買いシグナル)
- 短期の線が長期の線を下抜ける:デッドクロス(売りシグナル)
ゴールデンクロスは上昇トレンドへの転換を示唆し、デッドクロスは下落トレンドへの転換を示唆します。
そして突き抜ける角度が急なほど、強いシグナルになります。角度が緩いと、ゴールデンクロスとデッドクロスを行ったり来たりしてしまい、売買ポイントがわかりにくくなります。
移動平均線の売買シグナルは他にもあり、移動平均線の解説記事で詳しく説明しています。
4.MADC
「MACD(Moving Average Convergence Divergence)」は、トレンド系のテクニカル指標です。移動平均線を応用して、より売買タイミングの精度を上げた指標となっています。
MACDは次の3つの構成で表されます。
MACDの構成要素
- MACD線
:短期移動平均線−長期移動平均線
- シグナル線
:MACD線の移動平均線
- ヒストグラム
:MACD線−シグナル線
中心になるMACD線は、「短期の移動平均線」から「長期の移動平均線」を引いて求めます。つまるところは、長期のトレンドに対して、短期のトレンドがどれくらい勢いがあるかを示しています。
MACDがプラスなら上昇トレンドが、マイナスなら下落トレンドが予想されます。
MACDの代表的な売買シグナル
MACD線をさらに移動平均にしてなだらかにしたのが「シグナル線」。MACD線とシグナル線の交わりから、売買シグナルを判断するのが主な使い方です。
ここでも移動平均線と同じく、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」を使います。
- MACD線がシグナル線を上抜ける:ゴールデンクロス
- MACD線がシグナル線を下抜ける:デッドクロス
0ラインの下でゴールデンクロスになったら、これは価格の下落トレンドが底を打ち、これから上昇に転じるサインです。ここは買いシグナルになります。
0ラインの上でデッドクロスになったら、価格上昇のトレンドが頭打ちになり、これから下落に転じるサインです。ここは売りシグナルになります。
やはり突き抜ける角度が急なほど、強いシグナルになります。角度が緩いと、ゴールデンクロスとデッドクロスを行ったり来たりしてしまい、売買ポイントがわかりづらくなります。
詳細はMACDの解説記事をチェックしてみてください。
5.ボリンジャーバンド
「ボリンジャーバンド(Bollinger Band)」は、トレンド系のテクニカル指標です。シーンによっては、オシレーター的な使い方も可能です。
ボリンジャーバンドは、
- 中心の「移動平均線」
- それを覆う「バンド」
の2つで構成されます。
統計学を応用しているのが特徴で、偏差値の計算でも用いられる「標準偏差」を使っています。標準偏差とは「データのバラつきがどれくらいか?」を示す統計指標。
約68%のデータが入る範囲を「±1σ」、約95%のデータが入る範囲を「±2σ」と表現します。(「σ(シグマ)」は、標準偏差を意味するギリシャ文字)
移動平均線を中心に、約95%が収まる「±2σ」のバンドを使用するのが一般的です。
ボリンジャーバンドの代表的な売買シグナル
ボリンジャーバンドで売買シグナルを見つけるためには、一連の流れを押さえる必要があります。
ボリンジャーバンドの見方
- バンド幅が狭い「スクイーズ」を見つける
- バンド幅が広がる「エクスパンション」でトレンドが発生
- トレンドが継続する「バンドウォーク」が現れる
- バンド幅が最大になる「ボージ」でトレンドが終了する
売買シグナルは、「②エクスパンション」の際に、チャートがバンドをブレイクしたときです。
バンドの上側にチャートが突き抜けたら、上昇トレンドが始まります。ここは「買いシグナル」です。
逆にバンドの下側にチャートが突き抜けたら、下落トレンドが始まります。ここは「売りシグナル」になります。
ただ世間では、オシレーター的に真逆の使い方をしている人もいます。バンドを上に突き抜けたら買われ過ぎと判断し、逆に「売りシグナル」と捉えます。
このような「逆張り」でボリンジャーバンドを使う際は、シーンを選ぶのでよくよく注意が必要。長期投資なら素直に「順張り」で使いましょう。
詳細はボリンジャーバンドの解説記事をチェックしてみてください。
6.RSI
「RSI(Relative Strength Index)」はオシレーター系のテクニカル指標です。オシレーターと言えば、まず最初に名前が上がるのがRSIでしょう。
株式や為替の市場は、常に買い手と売り手がせめぎ合っています。さしずめRSIは「買い勢力」と「売り勢力」の綱引きを数値化したようなもの。
RSIは「0〜100」の数値で表され、
- 51~100:買い勢力が優勢
- 50:中立
- 0~49:売り勢力が優勢
を意味します。
RSIの代表的な売買シグナル
RSIの使い方は、「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を見極め、逆張り投資することです。
RSIでもっともよく利用されているのは、
- 70を超えたら買われ過ぎ:売りシグナル
- 30を下回ったら売られ過ぎ:買いシグナル
とする見方です。
この戦法が効きやすいのは、一定の価格の幅(レンジ)を行ったり来たりする「レンジ相場」です。レンジ相場の中では、RSI通りに売買すれば、概ね逆張り戦法が功を奏します。
逆に上昇トレンドや下落トレンドになっているときは、RSIは信頼できる指標にはなりません。ちなみにこれは他のオシレーター系指標でも同じ話になります。
RSIを使うときは、他のトレンド系指標と一緒に使いましょう。
このあたりの注意点は、RSIの解説記事で詳しく買いています。RSIの計算式も関わってくるところで、これも同じく解説記事をチェックしてください。
7.ストキャスティクス
「ストキャスティクス(Stochastics)」は、オシレーター系のテクニカル指標です。オシレーター系の中では、RSIの次に有名です。
ちょっと取っ付きづらい名前の、
- 短期の線:%K
- 中期の線:%D
- 長期の線:Slow%D
という3種類の線があります。「%K」が基準線となっていて、残りの2つは%Kを移動平均線にして、なだらかにしただけ。
普通はこのうち2本を選んで使います。
- 短期投資の場合は、「短期の%K」と「中期の%D」
- 中長期投資の場合は、「中期の%D」と「長期のSlow%D」
を使うのが一般的です。長期投資で使うなら迷わず後者を選びましょう。
そして、%Kは次のように計算します。(期間は9日間が一般的ですが、何日しても良い)
要は、「ここ9日間の高値に対し、今日の価格がどれくらいの位置にいるか?」を示しているわけです。
数値が大きいほど上昇トレンドを示し、数値が小さいほど下降トレンドを示唆しています。
ストキャスティクスの代表的な売買シグナル
ストキャスティクスもRSIと同様に、「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を見極め、逆張り投資に使います。
次の閾値で判断することが多いです。
- 80を超えたら買われすぎ:売りシグナル
- 20を下回ったら売られすぎ:買いシグナル
まず「中期%D」が閾値を超えたところでシグナルがでます。実際には%Dが閾値を超えたところだと、タイミング的にちょっと早すぎることもしばしば。
「長期Slow%D」も追随して閾値を超えたら、より強いシグナルになります。
ストキャスティクスは、やはりRSI同様に、レンジ相場で効果を発揮します。トレンド相場ではダマシになってしまうので要注意。
詳細はストキャスティクスの解説記事をチェックしてください。計算方法もより詳しく解説しています。
米国株に使える分析手法+2選
一般的なテクニカル分析には入りませんが、
- VIX指数(CBOE Volatility Index)
- 恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)
の2つもテクニカル分析チックに使えます。
テクニカル分析というよりは、世界の投資家がいま強気なのか弱気なのか、その心理を知る術と言った方が正しいですね。他のテクニカル分析と併用するのが良いでしょう。
主に米国の代表的な株価指数である「S&P500」を対象とした分析になるので、万人に使えるわけではありません。
特にインデックス投資はドンピシャです。米国だけでなく先進国株式や全世界株式も、大部分をS&P500銘柄が占めているので、同じように有効です。
8.VIX指数
VIX指数は、米国の代表的な株価指数である「S&P500」に対し、「投資家がどれほど先行きが不透明と感じているか」を示すバロメーターとなっています。
VIX指数は、投資家がS&P500が向こう30日でどれほど値動きがあるかの予想を数値化したもの。VIX指数が高まると暴落の予兆になるので、「恐怖指数」とも呼ばれています。
VIX指数は0〜100の数値で表され、通常時は10〜20の間で推移します。
VIX指数は、S&P500と逆相関になることが多く、特にVIX指数が急上昇したときは、株価は大暴落に見舞われる可能性が高くなります。
VIX指数の売買シグナル
投資をするなら、VIX指数が低い時の方が良いでしょう。VIX指数が低く(10台前半から中盤)推移しているときは、市場に不安材料が少なく、大まかに言えば上昇トレンドが期待できるからです。
VIX指数が20を超えたときは、投資家が暴落を警戒していると考えられます。30まで上がったら、暴落はすぐそこまで来ていると思った方が良いでしょう。
VIX指数が20を超えた瞬間は、高値掴みになる可能性があるので、投資を控えた方が良いと思われます。逆に暴落後の絶好の買い場を逃さないよう、投資資金に余裕を持たせておくのが良いでしょう。
なおVIX指数は、S&P500のオプション市場から逆算される指標で、初見の人には理解しづらい概念になっています。
VIX指数の解説記事では数式を使わず、わかりやすい用語で解説しています。
9.恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)
恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)は、米国株式市場に関連する7つの指標を合成した指標です。ニュースメディアのCNNが作っている変わった指標となっています。
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恐怖・強欲指数を構成する7つの指標
- Stock Price Momentum(株価の勢い)
- Stock Price Strength(株価の強さ)
- Stock Price Breadth(株価の振れ幅)
- Put and Call Options(プット&コールオプション)
- Junk Bond Demand(ジャンク債の需要)
- Market Volatility(株価の変動率)
- Safe Haven Demand(安全資産の需要)
ちなみに⑥は、一つ上で紹介した「VIX指数」がそのまま使われています。
これらの要素を総合して、市場が「恐怖」に駆られて売りに走っているのか、「強欲」に煽られて買い漁っているのかを分析します。
指数は0〜100の値を取り、見方は次の通りです。
恐怖・強欲指数の見方
- 0〜25:恐怖の極み(Extremely Fear)
- 26〜49:中立よりも恐怖寄り(Fear)
- 50:中立(Neutral)
- 51〜74:中立よりも強欲寄り(Greed)
- 75〜100:強欲の極み(Extremely Greed)
恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)の売買シグナル
恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)は、オシレーター系指標と同じような使い方になります。つまり逆張り投資ということですね。
0〜25の恐怖の極みにいるときは、買いのタイミングになるかもしれません。市場が弱気になって売られ過ぎた株が、割安になっている可能性があるからです。
75〜100にいるときは、売りのタイミングになるでしょう。市場は非常に強気で株式に資金が集まっている状態です。買われ過ぎと考えられるので、割高な株を売るタイミングになります。
詳細は恐怖・強欲指数の解説記事をチェックしてください。構成する7つの指標もより詳しく解説しています。
まとめ
今回は長期投資ではあまり使うことがないテクニカル分析を紹介してみました。
長期投資家にとっては、テクニカル分析ほど怪しいものはないのですが、テクニカル分析を使っている短期投資家が一定数いる以上は、テクニカル分析にも一定の効果があるはず。
長期投資は、テクニカル分析につきものの「ダマシ」が少ないやり方を選べるので、短期投資家よりも難易度は下がります。加えて読み違えたとしても、長い目で見れば一時の読み違えは誤差に過ぎません。
そういう意味では、「ちょっとでもパフォーマンスを上げるには有効で、ミスっても致命的にはならない」というのが長期投資におけるテクニカル分析の有り様かなと。
一括で大きな金額を投資する場合は、できる限り損しないタイミングを選ぶために、テクニカル分析を使ってみてはいかがでしょうか?
ただ長期投資の基本スタンスは、あくまでバイ&ホールドで着実に実りを得ること。テクニカル分析で売買差益を狙うスタイルではないので、利用はピンポイントに留めましょう。
もっと長期の視点で銘柄を検討するなら、ファンダメンタル分析も有効です。ファンダメンタル分析の解説記事では、サクッと見やすい指標を紹介しています。
「やっぱり分析なんて難しい!」と思った人は、開きなおって愚直に積立投資するのも良いでしょう。そもそもテクニカルもファンダメンタルも、そこまで勝率が高いものではありません。
「【FIREへの投資戦略】相場を読めない僕らが0から始める投資術」では、特別な知識がなくても着実にリターンをあげる投資方法を解説しています。チャートを読む自信が湧かない人は、合わせてチェックしてみてください。