投資を始めてしばらく経つと、よその証券会社のメリットが分かるようになってきます。複数の証券口座を持とうか検討する人も多いでしょう。
そこで気になるのは、「複数の口座を持つことで何かデメリットは無いのか?」ですよね。特に確定申告が必要かどうかは気になる点でしょう。
この記事では、複数の証券口座を持つメリットを解説しつつ、避けられないデメリットを解説していきます。ちなみに複数口座あっても確定申告は必須ではありませんが、した方が良い場面はあり得ます。
併せて、「証券口座を使い分けるコツ」についても切り込んでいこうと思います。これから2個目の口座を開設しようと思っている人は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
特定口座を複数もつメリット5選
まずは、特定口座(証券口座)を複数もつメリットを認識しておきましょう。
特定口座を複数持つメリット
- 有利な手数料を選べる
- 各証券会社の特典を享受できる
- IPOの抽選機会が増える
- 各社のツールを使える
- 障害時やメンテナンス時の対策になる
メリットを理解した上で、デメリットと釣り合うか否かを判断してもらえればと思います。
メリット①:有利な手数料を選べる
各証券会社の手数料は、ケータイの料金プランのように各社横並びになることが多いのですが、細かいところは条件が異なることがあります。
代表的な手数料に、国内株式を売り買いしたときにかかる取引手数料があります。取引手数料は、1日の取引量が一定以下なら無料の証券会社もあれば、少額の投資であっても手数料がかかるところもあります。
他には為替手数料もあります。外国株に投資をするときは、日本円を現地通貨に替える必要がありますが、このときの為替手数料にも各社で違いがあります。
複数の証券口座を持っていれば、その都度安い手数料を選択できるようになります。
メリット②:各証券会社の特典を享受できる
各証券会社には、それぞれ特色があります。
例を挙げると、
- 外国株が豊富な「SBI証券」「楽天証券」「マネックス証券」
- Pontaで投資できる「auカブコム証券」
- 楽天ポイントが貯まりやすい「楽天証券」
- IPOが狙いやすい「SMBC日興証券」
などなど、各社それぞれの強みがあります。(上記はあくまで一例です)
クレカは基本的には同じ機能ですが、細かいところで違いがあります。たくさん持ちすぎると手に余るものの、数枚を使い分けるのはごく普通なことでしょう。
メリット③:IPOの抽選機会が増える
IPO(Initial Public Offering)は、日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」と呼ばれています。非上場の企業を、誰もが市場で株の取引ができるように上場することです。
IPO株は上場前に購入し、上場後の初値で売却するだけで、利益が出るケースが多くあります。そんなわけで、IPO株はみんなが欲しがるので、購入権利を抽選しています。
IPOはある意味、限定品のネット抽選販売みたいなものなので、抽選できるアカウント(証券口座)が多いほど有利になります。
メリット④:各社のツールを使える
証券会社各社は、投資家に情報提供するための独自のツールを持っています。中には有料のツールもありますが、多くは口座開設しているだけで使えます。
もちろん口座開設は基本的に無料です。口座維持にもお金はかかりません。というわけで、無料でツールを使わせてもらえるということですね。
メリット⑤:障害時やメンテナンス時の対策になる
証券会社はネットで金融商品を売買するための複雑なシステムを持っています。金融庁の厳しい監査を受けているので、セキュリティ対策は常にアップデートしています。
それゆえ、ユーザーに影響がない時間を選ぶものの、システムメンテナンスはちょこちょこと発生します。機会としては多くありませんが、障害が起きる可能性もあります。
そのような場面で絶好の投資機会が舞い込んだとき、口座が一つしかなければどうしようもありません。もう一つ証券口座を持っていれば、万が一の機会にも対応できるでしょう。
特定口座を複数もつ4つのデメリット
続いて、複数の特定口座(証券口座)を持つことで生じてしまうデメリットも見ていきましょう。
特定口座を複数持つデメリット
- どれかの口座で損失が出たら、税金を払い過ぎてしまう
- 払い過ぎた税金を取り戻すためには確定申告が必要
- アカウントの管理が面倒になる
- 保有資産を一覧で見づらくなる
デメリット①:どれかの口座で損失が出たら、税金を払い過ぎてしまう
これが複数の特定口座を持つ最大のデメリットになります。
ほとんどの人は、「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいて、投資の利益にかかる税金は、勝手に差っ引かれています。同じ口座内で損失が出ている場合は、勝手に納税額を調整してくれています。そのため、基本的に確定申告は必要ありません。
しかしながら、複数の口座を持っているときは話は別です。
当たり前なんですが、各証券会社は、同会社の口座内でしか損益を調整してくれません。よその証券会社の口座で損失が出てても、自社の口座で利益が出ていれば、その分は普通に課税されてしまいます。
本来の投資の税金は、利益が出ている口座と損失が出ている口座を合算して、全体で利益が出ている分だけ税金を払えばOKです。ですが、複数の口座を持っているがゆえに、何もしないと多めに税金を払ってしまうことに。
デメリット②:払い過ぎた税金を取り戻すためには確定申告が必要
上記のデメリットの続きの話です。
どれかの口座で損失が出ている場合は、複数の口座の損益を合算し、トータルの損益を確定申告します。これを「損益通算」と呼びます。
払いすぎてしまった税金は、確定申告をしなければ取り戻せません。ちなみに確定申告が面倒ならしなくても大丈夫ですが、しないと損します。余程少額でない限りは、確定申告を行った方が良いでしょう。
デメリット③:アカウントの管理が面倒になる
各証券会社ごとにIDとパスワードを管理するのは、それなりに面倒です。証券口座パスワードは、「ログイン用」の他に、「取引時に入力する用」もあります。
引っ越して住所が変わったときに、いろんなサービスの情報を変更するのは、それなりに面倒ですよね。わたしが引っ越したときには、情報変更がネットで完結せず、わざわざ郵送でやりとりしたところもありました。
デメリット④:保有資産を一覧で見づらくなる
証券口座が一つであれば、
- 自分はどんな銘柄に投資しているか
- どの銘柄が含み益が出ていて、どの銘柄が含み損が出ているか
- トータルではプラスなのか、マイナスなのか
の管理は容易です。
しかし口座が複数になった瞬間に、基本的には個々の口座ごとに数字を管理することになります。自分の資産全体を俯瞰するのが難しくなってしまうのです。
マネーフォワードのようなツールで、全体の資産額はウォッチできますが、細かいところはやはり各口座にログインして見ることになります。
複数の口座があったら確定申告しなければならないの?
「複数の特定口座を持ったら、確定申告しなければならないの?」という素朴な疑問を持っている人もいると思います。
結論を先に言うと、「複数の口座を持っていること=確定申告すること」にはなりません。
特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」
証券口座を作るとき、「特定口座(源泉徴収あり)」か「特定口座(源泉徴収なし)」を選択します。
- 特定口座(源泉徴収あり)
:証券会社が売却損益・税金の計算を行い、税金を売却代金から差し引いてくれる。確定申告は不要。
- 特定口座(源泉徴収なし)
:証券会社等が売却損益の計算はするものの、税金の計算や納税までは行わない。年間トータルで利益が出ている場合は確定申告が必要。
多くの人は、「源泉徴収あり特定口座」を選択しているので、勝手に証券会社が税金分を差っ引いてくれています。複数口座持っていても確定申告は必須ではありません。
ただし「源泉徴収あり」の場合、どれかの口座で譲渡損失が出ていると、譲渡利益が出ている他の口座は税金を引かれ過ぎているので、確定申告をした方が良いでしょう。
「源泉徴収なし」を選んでいる人は、口座が1つでも、複数口座持っていても、基本的には確定申告が必要です。
基本は「源泉徴収あり」でOK
では、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」はどちらを選べば良いのでしょうか?
一般的な話をするなら「源泉徴収あり」で問題ないでしょう。
「源泉徴収あり」であれば、複数口座持っていても、どの口座でも損失が出ていないのであれば、確定申告は必要ありません。しなくて済むならしないに越したことはありません。
長期で積立投資を行っている人であれば、売却の機会自体が少なくので、年間を通して損失が出ているケースは限られるでしょう。
この辺りの投資に関わる税金の話は、「【知っておきたい投資の税金】特定口座とは?源泉徴収「あり」「なし」の違いと確定申告について」で解説しています。
上記の話の意味がスッと入ってこなかった人は、こちらもチェックしてみてください。
複数の口座を使い分ける4つのコツ
ここまでで、特定口座を複数もつメリットとデメリットを解説してきました。個人的には複数口座を使い分けるメリットの方が大きいかなと思っています。
そうすると、どういう使い分けができるか気になりますね。メリットは教授しつつ、なるべく管理工数を下げる工夫をしたいですね。
コツ①:メインの証券口座は銀行口座と連携できると楽
グループ内にネット銀行がある証券会社は、「証券口座」と「銀行口座」を連携させることができます。
これは中々の優れもので、口座を連携すると、
- 銀行口座のお金から証券を購入したり
- 証券口座に入った配当金や売却金を、自動で銀行口座に移したり
と、口座間のお金の移動がかなり楽になります。
メインの証券口座は銀行口座と連携できるものがオススメです。
具体的には、「SBI証券」と「楽天証券」。どちらもネット証券の雄で、どの点をとってもメイン口座を張れるだけのスペックを備えています。
コツ②:短期投資と長期投資で口座を分ける
短期投資とは、株価の値上がりや値下がりを予想して、売買差益で儲ける投資です。日々値動きをキャッチしながら、ここぞというときに買って、売り時を逃さずに売る、という一般にイメージされやすい投資のスタイルです。
一方の長期投資は、「バイ&ホールド」が基本。売らずに長期で保有して、複利効果で資産を増やします。個別銘柄ではなく、投資信託やETFのような分散投資できる商品を、毎月一定額を積み立てているケースが多いでしょう。
両者は投資スタイルが全く異なるので、口座を分けておかないと混乱します。保有銘柄のどれが長期で、どれが短期かがわからなくなってしまいます。
コツ③:投資する商品によって口座を分ける
各証券会社にそれぞれある強みを生かすためにも、上手に使い分けたいところ。ここが使い分けのメインになります。
また、それぞれの証券口座で様々な商品を持っていると、見なければならないページが増えてしまいます。
- 口座Aは、国内株式だけ
- 口座Bは、米国株式だけ
- 口座Cは、投資信託だけ
といった具合に分けておいた方が、管理はしやすくなります。
国内株式なら手数料の低さで選ぼう
国内株式であれば、どの証券会社を選んでもラインナップに差は出ません。基本的には手数料が安いところを選べばOKです。
1日あたりの取引数が一定以下であれば、取引手数料が無料になる
- SBI証券
- 楽天証券
- 松井証券
がオススメです。
米国株式は取り扱っている証券会社が限られる
いま人気の米国株式は、全てのネット証券で扱っているわけではありません。手数料や品揃えを鑑みると、
- SBI証券
- 楽天証券
- マネックス証券
が有力な選択肢になるでしょう。為替手数料が安い、「SBI証券」と「マネックス証券」が特にオススメです。
投資信託はポイントで選ぼう
投資信託は、どの証券会社で購入してもほとんど条件は変わりません。投資信託は購入額や保有額に対してポイントがつくケースが多く、ポイントで選べば良いでしょう。
ポイントで言えば利用者が多い「楽天証券」が一歩リードといった印象。
しかも、毎月500ポイント投資信託を購入すると、楽天市場のポイントが+1%になるので、楽天利用者にはかなり嬉しいサービスになっています。
コツ④:IPOを狙うならとりあえず口座開設
IPOは抽選制なので、証券口座は多ければ多いほど有利です。というわけで、IPO狙いの投資家は口座数が多くなる傾向になります。
ただし、抽選に当たるかどうかは運に左右されるので、当たったらその口座で売買するしかありません。そのためIPOに参加する場合は、口座の使い分けはしづらいでしょう。
もしかしたら、投資信託のために使っている口座で抽選に当たってしまうかもしれません。これは残念ながら受け入れるしかありません。
各ネット証券会社は、「【まだ始めてないの?】ネット証券5社の選び方を解説。今すぐ証券口座を開設しよう!」で徹底比較しています。
各社の特徴をチェックしてみましょう!
まとめ:複数の口座で美味しく立ち回ろう
今回は、複数の特定口座(証券口座)を持つメリットとデメリットを紹介しました。
もう一度振り返りましょう。
特定口座を複数持つメリット
- 有利な手数料を選べる
- 各証券会社の特典を享受できる
- IPOの抽選機会が増える
- 各社のツールを使える
- 障害時やメンテナンス時の対策になる
特定口座を複数持つデメリット
- どれかの口座で損失が出たら、税金を払い過ぎてしまう
- 払い過ぎた税金を取り戻すためには確定申告が必要
- アカウントの管理が面倒になる
- 保有資産を一覧で見づらくなる
個人的には、複数口座を持つメリットは結構大きいと思っているので、基本的には複数口座をオススメしたいです。
わたしの場合は、メインの米国株式は「SBI証券」、サブは投資信託はポイントが貯まる「楽天証券」です。どちらか一方に寄せると、微妙に損するんですよね。
複数口座の主なデメリットは、損益通算するために確定申告が必要になること。ただし、米国株に投資している人や、株の配当金メインの人は、確定申告しているケースも多いです。
本格的に投資を始めようと思ったら、いつか確定申告と向き合う日が来ると思います。どうせその日が来るなら、複数口座で運用しても良いのでは?と思います。
すでに何らかの投資を始めていて、慣れてきた人は次の口座にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?(投資をこれから始める人は、まずは一つで十分です!)
FIREのための投資に必要な考え方は、「【FIREへの投資戦略】相場を読めない僕らが0から始める投資術」で全て解説しています。
投資をこれから始める人は、ぜひ合わせてチェックしてみてください。かなり理解が深まると思います。