長期投資であっても、まとまった資産を突っ込むときや、投資対象を切り替えるときなど、売買のタイミングを図らなければならない事態が稀に訪れます。
そんなときは、短期投資家の手法である「テクニカル分析」が役に立ちます。中でも「移動平均線」はもっともポピュラーな分析方法でしょう。
この記事では、長期投資でも使える移動平均線の活用方法を解説しています。短期投資のトレードには足りない内容かもしれませんが、長期投資なら十分なレベルかと思います。
まとまった資金の投資タイミングに悩んでいる人や、投資銘柄のスイッチを考えている人は、ぜひチェックしてみてください。
移動平均線とは?
「移動平均線(Moving Average)」とは、一定期間の株価や為替の平均値を、折れ線グラフで表したものです。代表的なテクニカル分析の一つです。
一般的には、一定期間の終値をつなぎ合わせます。5日移動平均線だったら、直近5日間の終値の平均をプロットしていきます。
移動平均線は、単に価格推移を視覚的にわかりやすくしただけの線なのですが、この線の動き方や交わり方によって、売り買いのタイミングを図ることができます。
移動平均線は複数線を使い分ける
移動平均線は通常、期間の異なる2〜3本を使い分けます。期間が短いほど線がジグザグになり、期間が長いほどなだらかな線になります。
日本国内では、
- 短期:25日
- 中期:50日
- 長期:75日
が伝統的に使われています。5日が1週間の営業日で、25日は大体1ヶ月を表しています。
移動平均の期間を何日にするかは、投資家の自由。短期投資がメインの人は5日を使うこともあれば、長期の人は200日を使うこともあります。
米国では50日が一般的に使われていて、長期では200日がよく使われています。
移動平均線の種類
移動平均線にはいくつか種類があります。次の3つが代表的。
- 単純移動平均(Simple Moving Average)
文字通り、その期間の終値を単純平均していた移動平均線
- 加重移動平均(Weighted Moving Average)
過去日付の価格ほど重み付けが小さくなるように算出した移動平均線
- 指数平滑移動平均(Exponential Moving Average)
過去日付の価格ほど重み付けが小さくなるように算出した移動平均線で、さらに直近日付を重視している
3者の違いは、直近の価格をどれほど重視するかです。短期トレードメインの人は、「加重移動平均(WMA)」や「指数平滑移動平均(EMA)」を使うことが多いようです。
代表的なテクニカル分析の手法に「MACD」があります。MACDは「指数平滑移動平均(EMA)」を使い、さらに発展させた分析となっています。詳細はMACDの解説記事にて。
売り時・買い時を見極める移動平均線の使い方3選
では実際に移動平均線を使って、売り買いのタイミングをチェックしていきましょう。
次の3つを取り上げてみます。
- 移動平均線を「支持線」「抵抗線」をして使う
- 移動平均線との乖離率を見る
- ゴールデンクロスとデッドクロスに注目する
それぞれ細かい中身を見ていきましょう。
①移動平均線を「支持線」「抵抗線」をして使う
テクニカル分析の考え方に、「支持線(サポートライン)」「抵抗線(レジスタンスライン)」という考え方があります。
まずは、ざっとそれぞれの意味をさらっておきましょう。
とある期間のチャートにおいて、
- 高値の水準を線で結んだものが「抵抗線」
- 安値の水準を線で結んだものが「支持線」
です。これらは投資家の心理がチャートに現れたものと考えられています。
例えば、①の点はこのチャートでは「売り」のタイミングです。ここで売りそびれた投資家の心理は、「見過ごした!次にこの価格まで上がったら機を逃さず売るぞ!」となります。
そうすると、③の価格まで上昇したときに、売り圧力が強くなるので、価格は下落に転じます。このような心理が働くので、抵抗線を境に価格が上がりづらくなるのです。
逆に②の点は、「買い」のタイミングでした。ここで買いそびれた投資家は、「チャンスだったのに!次のこの価格まで下がったら絶対買うぞ!」となります。
結果として、④の価格まで下落したときに、買い圧力が強くなるので、価格は上昇に転じます。支持線を境に価格が下がりづらくなります。
チャートがある程度投資家の心理を反映したものと考えると、
「抵抗線」を突き抜けて価格が上がれば、さらに株価が上がる可能性が高くなります。多くの投資家の脳裏に上昇トレンドがよぎり、買い圧力が高まるからです。
逆に「支持線」を突き抜けて価格が下落したときは、株価は下がりやすくなります。強い下落トレンドの兆候が見え、売り圧力が高まるからです。
さて前置き長くなりましたが、移動平均線は擬似的に、「抵抗線」「支持線」になります。
チャートが移動平均線の下にいれば「抵抗線」に、チャートが移動平均線の上にいれば「支持線」になるわけです。
それぞれを突き抜けたタイミングが、売り買いのタイミングになります。
なお「抵抗線」と「支持線」自体もテクニカル分析の一つです。移動平均線と同じくらい基本的な知識です。詳細は抵抗線と支持線の解説記事をチェックしてみてください。
②移動平均線との乖離を見る
移動平均線から、現在のチャートが大きく乖離しているときも売買のサインになります。
ここはシンプルに、
- チャートが移動平均線を大きく超えている:売りシグナル
- チャートが移動平均線を大きく下回っている:買いシグナル
となります。
移動平均線と価格が大きく乖離しているときは、利益確定や、買い戻しによって、移動平均線に近づくように修正されるからです。
③ゴールデンクロスとデッドクロスに注目する
今後はチャートではなく、長期と短期の、2つの移動平均線の交わりに注目します。
- 短期の線が長期の線を上抜ける:ゴールデンクロス(買いシグナル)
- 短期の線が長期の線を下抜ける:デッドクロス(売りシグナル)
ゴールデンクロスは上昇トレンドへの転換を示唆し、デッドクロスは下落トレンドへの転換を示唆します。
そして突き抜ける角度が急なほど、強いシグナルになります。角度が緩いと、ゴールデンクロスとデッドクロスを行ったり来たりしてしまい、売買ポイントがわかりにくくなります。
TradingViewで移動平均線を設定しよう
チャート分析には、「TradingView」というソフトがオススメです。めちゃくちゃ高機能なのに、無料でも使えます。(アカウント登録は必要!)
「TradingView」のインストールはこちらのページからどうぞ。
手順①:移動平均線を表示する
移動平均線を表示させるにはまず、画面上部の「Indicator」をクリックします。
「Built-ins」の中にある、「Moving-Average」を選びます。
すると画面上に移動平均線が現れます。画面左上に移動平均線の情報が表示されています。
手順②:移動平均線の期間を設定する
続いて、移動平均線を任意の期間に変更します。画面左上の移動平均線の情報から「Settings」の歯車アイコンをクリックします。
「Length」を任意の日付に変更して、「OK」をクリックして完了です。
複数の移動平均線を出す場合は、同じ作業を繰り返せばOKです。
ぜひ「TradingView」を使って、移動平均線を設定してみましょう!
代表的なテクニカル分析は「【知らなきゃいつか損する】長期投資でもテクニカル分析が使える理由とオススメ分析」で解説しています。どれも長期投資でも使用できる代物です。