ボリンジャーバンドは、統計学を使用したテクニカル分析です。チャートに帯を表示させて、帯の伸び縮みや、帯からチャートが飛び出したポイントから、売買タイミングを見定めます。
視覚的に非常にわかりやすいのがボリンジャーバンドの特徴で、初心者から玄人まで幅広く使用されています。
この記事では
- ボリンジャーバンドの計算方法
- ボリンジャーバンドの王道の活用方法
- ボリンジャーバンドの邪道な活用方法
を解説しています。
まずは正しい方法を理解しましょう。わたしのような長期投資メインの人であれば、王道の活用方法だけで事足りると思います。
ボリンジャーバンドとは?
「ボリンジャーバンド(Bollinger Band)」は、統計学を活用したテクニカル分析です。
これからやってくる上昇(または下落)トレンドを見つけるのに役立ちます。また本来の使い方ではありませんが、レンジ相場では逆張り投資にも使えます。
ボリンジャーバンドは「標準偏差」を使用する
ボリンジャーバンドの特徴は、統計学では超メジャーな「標準偏差」を使用することにあります。標準偏差とは、一言でいえば「データのバラつきの大きさ」を示しています。
標準偏差は次の計算式で求めます。
学校のテストを想像してみましょう。
1年生の1組と2組で、それぞれテストをした結果、次のような点数になりました。計算をカンタンにするために、1クラス5人とします。
出席番号 | 1-1組 | 1-2組 |
1番 | 60 | 85 |
2番 | 55 | 70 |
3番 | 50 | 50 |
4番 | 45 | 25 |
5番 | 40 | 20 |
平均点 | 50 | 50 |
標準偏差(σ) | 7.1 | 25 |
両クラスの平均点は同じです。
ですがパッとみてもらった通り、2組の方が点数のバラつきが大きいですね。このバラつきの大きさを反映しているのが標準偏差です。
統計学では、この標準偏差を「σ(シグマ)」というギリシャ文字で表します。毎回「標準偏差」と書くのは大変なので、記号で省略しているだけです。
データのバラつきが大きいほどσが大きくなり、データのバラつきが小さいほどσも小さくなります。
そして、データの平均値を中心として、
- 約68%のデータが入る範囲を「±1σ」
- 約95%のデータが入る範囲を「±2σ」
と表現します。
ここがボリンジャーバンドの肝になっています。
ボリンジャーバンドの構成要素
ボリンジャーバンドは、
- 移動平均線
- バンド
の2つで構成されます。
移動平均線
移動平均線とは、一定期間の株価の終値を平均したものです。生のチャートより緩やかな線になり、トレンドが見やすくなります。
ボリンジャーバンドでは、一般的に20日か25日の移動平均線が使われます。
ピンと来なかった人は、移動平均線の解説記事も参考にしてみてください。
バンド
バンドは、移動平均線からの標準偏差の範囲を表しています。±1σまたは、±2σの範囲がバンドとして使われます。
値動きが少ないとバラつきが小さくなり、バンドの幅は狭くなります。値動きが大きくなるとバラつきが大きくなり、バンドの幅は広がります。バンドが広がるときは、移動平均線を中心に上下同じくらいの幅で広がります。
バンドが縮んだり、広がったりするのは、トレンドの始まりや終わりを示す重要なサインになります。これは後ほど解説します。
また、-1σ〜+1σのバンドは、チャートが約68%の確率で収まる範囲です。-2σ〜+2σのバンドは、チャートが約95%の確率で収まる範囲です。
±2σのバンドからチャートがはみ出るケースがありますが、これは5%の確率でしか起こらないレアなケースと言えるでしょう(といっても20日に1回出ると考えれば、そう少なくはないのですが)。
基本的には±2σのバンドを使い、バンドからチャートがはみ出たところが売買シグナルになります。これも後ほど解説します。
ボリンジャーバンドの見方と売買シグナル
ボリンジャーバンドを開発したジョン・ボリンジャー氏は、この指標を「順張り」で使うことを推奨しています。
順張りとは、上昇(または下落)トレンドの発生を見たら、素直トレンドに乗って買い(または売り)注文を入れる投資方法です。
対義語は「逆張り」。価格上昇を見たら、買われすぎと判断し、逆に売りを入れる投資方法です。ボリンジャーバンドを「逆張り」で使う人もいますが、本来意図された使い方ではありません。
①スクイーズを見つける
「スクイーズ(squeeze)」とは、「握る」「絞る」を意味する英単語。ボリンジャーバンドでは、バンドの幅が狭くなっている状態を指します。
スクイーズの状態は、レンジ相場に見られる現象です。レンジ相場とは、チャートが上方向にも下方向にも動かず、一定の価格範囲を行ったり来たりしている状態です。トレンドがない状態とも言えます。
相場はレンジ→トレンドを繰り返すので、レンジ相場の後には、必ずトレンド相場がやってきます。
レンジ相場になると、中心の移動平均線が水平になり、バンドも水平になります。そして、値動きの幅が小さくなるので、バンドの幅が狭くなります。
ボリンジャーバンドの幅が狭くなっているスクイーズの状態は、この後に価格が上下のどちらかにブレイクする兆しになります。
②エクスパンションでトレンドが発生
「エクスパンション(expansion)」は、「拡大」を意味する英単語。ボリンジャーバンドでは、バンド幅が広がることを意味します。
値動きの少ないレンジ相場から抜け出し、チャートが上下のどちらかに傾いたときにエクスパンションが見られます。エクスパンションが発生すると、トレンドが発生する可能性が高くなります。
ここでトレンド発生のサインになるのが、ボリンジャーバンドの±2σの範囲からチャートがブレイク(飛び出した)ときです。
バンドの上弦(+2σ)を上抜ければ、上昇トレンドが期待できます。ここは「買いシグナル」になります。
バンドの下弦(-2σ)を上抜ければ、下落トレンドが危惧されます。ここは「売りシグナル」になります。
③バンドウォークでトレンドが継続する
バンド幅が広がったエクスパンションの状態で、チャートがバンドを飛び出した後は、しばらくトレンドが続きます。このトレンドが継続している状態を「バンドウォーク」と呼びます。
バンドウォークの特徴は、移動平均線を境に、チャートがトレンドが発生している方向に偏ることです。
上昇方向にバンドウォークが発生している場合は、「移動平均線の上」〜「バンドの上弦(+2σ)」の間でチャートが推移し、どんどん上値を切り上げていきます。買いシグナルを逃していなければ、含み益が増えていく状態です。
逆に下落方向にバンドウォークが発生している場合は、「移動平均線の下」〜「バンドの下弦(-2σ)」の間でチャートが推移し、どんどん下値を切り下げていきます。
④ボージでトレンドが終わる
バンドウォークが続いたあと、バンドの幅が最大になる「ボージ」が訪れます。ボージはトレンドの終了を意味します。
ただバンド幅がいつまで広がり続けるかは、実際のところわかりません。そのため現在がボージなのかを察知するのは難しいでしょう。
広がり続けたバンドが収縮に向かったら、ボージを過ぎてトレンドが終了したんだな、と一歩遅れて察知することになると思います。
上昇トレンドが終わったなら「売り」を、下落トレンドが終わったなら「買い」を検討しましょう。
というわけで相場は「スクイーズ」→「エクスパンション」→「バンドウォーク」→「ボージ」の順で推移することになります。
- バンド幅が最も狭くなる「スクイーズ」は、トレンドの始まり
- バンドが最大幅まで広がる「ボージ」は、トレンドの終わり
と覚えておくと良いでしょう。
ボリンジャーバンドを逆張りで使う方法
ボリンジャーバンドは本来、「順張り」で使うものです。ただ「逆張り」で使用されるケースも多く見られます。
ボリンジャーバンドの開発者は、「逆張り」での使用は推奨していませんが、実際には逆張りで使えるシーンもあります。それはレンジ相場で、チャートが一定の幅を行ったり来たりしているときです。
レンジ相場の場合は、
- チャートがバンドの上弦(+2σ)を上抜けたら買われすぎと判断し、「売りシグナル」
- チャートがバンドの下弦(-2σ)を下抜けたら売られすぎと判断し、「買いシグナル」
になります。トレンド相場と逆のシグナルになることに注意です。
ただしレンジ相場を見極めて細かいリターンを積み上げるよりも、トレンドに乗って一気にリターンを上げる方が、難易度はずっと低くなります。
そもそもボリンジャーバンドが意図する使い方ではないこともあり、レンジ相場の逆張りはやや上級者向けになるかもしれません。
TradingViewでボリンジャーバンドを設定しよう
チャート分析には、「TradingView」というソフトがオススメです。めちゃくちゃ高機能なのに、無料でも使えます。(アカウント登録は必要!)
「TradingView」のインストールはこちらのページからどうぞ。
まずはじめに、画面上部の「Indicator」をクリックします。
「Built-ins」の中にある、「Bollinger Bands」を選びます。
チャートを包み込むようにボリンジャーバンドが現れました。
デフォルトでは、移動平均線は20日、バンド幅は±2σになっています。
設定を変更する場合は、「Settings」の歯車マークをクリックします。
変更するとしたら、移動平均の日数くらいかと思います。赤枠の部分を変更すればOKです。ちなみに「StdDev」で、σの値を変更できます。
ぜひ「TradingView」を使って、ボリンジャーバンドを設定してみましょう!
代表的なテクニカル分析は「【知らなきゃいつか損する】長期投資でもテクニカル分析が使える理由とオススメ分析」で解説しています。どれも長期投資でも使用できる代物です。