数あるテクニカル分析の中でも、特によく使われるのが「MACD」です。売買タイミングを図る上では有効な手立てになります。
MACDの概念はちょっと一見するとわかりづらいのですが、中身はそれほど複雑ではありません。見方もシンプルで使いやすいと思います。
この記事ではMACDの概要と、MACDを活用した売買シグナルの見つけ方を解説しています。
短期トレーダーだけではなく、長期投資でも活用できます。一括投資するときや、資産売却するときに使えるので、覚えておいて損はありません。
MACDとは?
「MACD(Moving Average Convergence Divergence)」は、代表的なテクニカル分析指標の一つです。
その概念を一言で表すのは難しいのですが、強いていうなら「移動平均線を応用して、より売買タイミングの精度を上げた指標」といったところでしょう。
「移動平均線」とは
一定期間の株価や為替の平均値を、折れ線グラフで表したものです。5日移動平均線だったら、直近5日間の終値の平均をプロットします。
簡単に言えば、値動きをより視覚的にわかりやすくしたもの。期間は5日〜200日と投資家のスタンスによって変わってきます。
*詳細は、移動平均線の解説記事をチェックしてみてください
そしてMACDでは、移動平均線の中でも、直近日付の価格の比重を高くした「指数平滑移動平均線(EMA)」が使われます。
そしてMACDは次の3つの構成で表されます。
MACDの構成要素
- MACD線
:短期EMA−長期EMA
- シグナル線
:MACD線の移動平均線
- ヒストグラム
:MACD線−シグナル線
少々複雑に見えますね。順を追って中身を理解していきましょう。
構成要素①:MACD線
MACD線は、短期の移動平均線から、長期の移動平均線を引いて求めます。
もしこの値がプラスであれば、直近の価格推移のトレンドが、長期の価格推移のトレンドを上回っていることになりますね。つまり、価格が上昇トレンドにあることを意味します。
反対にマイナスであれば、直近の価格推移のトレンドが、長期の価格推移のトレンドを下回ってしまった状態です。価格は下落トレンドにあることになります。
構成要素②:シグナル線
シグナル線は、MACD線をさらに移動平均線にしたものです。移動平均にしているので、よMACD線よりもなだらかな線になります。
MACD線の推移をより視覚的にわかりやすくしています。このシグナル線とMACD線の交わりから、売買タイミングを図ることができます。
構成要素③:ヒストグラム
ヒストグラムは、MACD線とシグナル線の差異を棒グラフで表したものです。
- MACD線>シグナル線:棒グラフはプラス(価格上昇の兆し)
- MACD線<シグナル線:棒グラフはマイナス(価格下落の兆し)
を意味します。
変数設定について
「MACD線」「シグナル線」には、それぞれ設定できる変数があります。これらの変数は、投資家が自由に決めることができます。
MACDを考案したジェラルド・アペル(Gerald Appel)氏が推奨しているのは、次の組み合わせとなっています。
投資スタイル | 短期EMAの期間 | 長期EMAの期間 | シグナル線の期間 |
短期 | 6 | 19 | 9 |
中期 | 12 | 26 | 9 |
長期 | 19 | 39 | 9 |
これ以外にも色々とパターンがあるようです。
変数の期間を短くするほど、売買タイミングを早く察知できますが、「ダマシ(定石通りに動かない)」が多くなります。
変数の期間を長くするほど、売買タイミングの察知が遅れる代わりに、ダマシの影響は少なくなります。
もっとも使われている設定値は「12・26・9」
広く一般的に使用されている設定値は、「12・26・9」となっています。
MACD含め、テクニカル分析は、一種の美人投票のような側面があります。みんなが「価格上昇のサインだ!買うぞ!」と思ったら、買い圧力で価格が上昇します。逆もまた然り。
他の投資家が一切使っていない独自の設定値は、テクニカル分析の本質から有効でないでしょう。多くの投資家が使っている設定値を踏襲した方が、より精度の高い結果につながると思われます。
MACDの売買シグナルの見方
さて、MACDがなんぞやがわかったところで、売買タイミングの目安を見ていきましょう。
売買シグナル①:ゴールデンクロス・デッドクロス
「ゴールデンクロス」「デッドクロス」は、移動平均線で使われるもので、MACDでも同じように使います。
それぞれの定義は次の通りです。
- MACD線がシグナル線を上抜ける:ゴールデンクロス
- MACD線がシグナル線を下抜ける:デッドクロス
0ラインの下でゴールデンクロスになったら、これは価格の下落トレンドが底を打ち、これから上昇に転じるサインです。ここは買いシグナルになります。
0ラインの上でデッドクロスになったら、価格上昇のトレンドが頭打ちになり、これから下落に転じるサインです。ここは売りシグナルになります。
売買シグナル②:0ラインブレイクアウト
ゴールデンクロスとデッドクロスのさらに先に、「0ラインブレイクアウト」があります。
ゴールデンクロスの後に、MACD線が0の基準線を上抜けたときは、本格的な上昇トレンドを意味しています。シグナル線も追従して0を超えたら、より強い上昇トレンドになります。ここは買い増しのシグナルになります。
デッドクロスの後に、MACD線が0の基準線を下抜けたときは、本格的な下落トレンドを意味しています。シグナル線も追従して0を下回ったら、より強い下落トレンドになります。トレードであれば、損切りを考える場面です。
【注意!】MACDはレンジ相場では機能しない
MACDの弱点に、レンジ相場に弱いことが挙げられます。
レンジ相場とは、一定の値幅(レンジ)の間で価格が推移している状態を指します。要するに上昇にも下落にもなり切らず、行ったり来たりしている相場のことです。
トレンドがない状態でMACDを使うと、「ダマシ」になる可能性が高いです。ダマシとは、テクニカル分析の定石通りに相場が動かない状況を指します。
MACDは移動平均線を応用した分析でしたね。トレンドがなくジグサグに値動きしている場合、元の移動平均線がグチャッとするので、MACDもグチャッとなってしまいがち。
結果として、ゴールデンクロスとデッドクロスが行ったり来たりして、結局どこで売買すれば良いのか分からなくなってしまうのです。
というわけでMACDは、トレンド相場で使うようにしたいところです。
TradingViewでMACDを設定しよう
チャート分析には、「TradingView」というソフトがオススメです。めちゃくちゃ高機能なのに、無料でも使えます。(アカウント登録は必要!)
「TradingView」のインストールはこちらのページからどうぞ。
まずはじめに、画面上部の「Indicator」をクリックします。
「Built-ins」の中にある、「MACD」を選びます。
画面下半分にMACDが現れました。左上に設定が表示されており、もっとも一般的な「12・26・9」がデフォルトです。
設定を変更する場合は、「Settings」の歯車マークをクリックします。
赤枠で囲った変数を調整できます。他の変数はいじる必要はないかと。
ぜひ「TradingView」を使って、MACDを設定してみましょう!
代表的なテクニカル分析は「【知らなきゃいつか損する】長期投資でもテクニカル分析が使える理由とオススメ分析」で解説しています。どれも長期投資でも使用できる代物です。