米国の「S&P500」は世界で最も注目されている株価指数です。
投資の神様ウォーレン・バフェット氏もS&P500を重視していて、投資知識の浅い人はS&P500のインデックス投資が最適と発言しています。
実際に米国でも日本でも、投資信託やETFで1番人気の銘柄は、S&P500に連動するインデックスファンドです。それも圧倒的な人気っぷりです。
この記事では、
- S&P500とはどんな株価指数なのか?
- なぜそんなに注目されているのか?
- どれくらいのリターンが狙えるのか?
- どのように算出されているのか?
- S&P500に投資できる代表的な商品
を解説しています。
特にインデックス投資はほとんどの場合で、S&P500がポートフォリオの中心になります。米国のインデックスのみならず、「先進国株式」や「全世界株式」も同様です。
インデックス投資をしている人は、何百万円、何千万円という大金を、事実上S&P500の構成銘柄に突っ込むことになるので、絶対に押さえておきましょう!
米国を代表する株価指数「S&P500」と「ダウ平均株価」
米国の代表的な2つの株価指数に、「S&P500」と「ダウ平均株価」があります。米国のみならず、世界中の投資家から注目を集めています。
2つの違いは、次の通りです。
S&P500 | ダウ平均株価 | |
正式名称 | スタンダード・アンド・プアーズ500種指数 | ダウ工業株30種平均 |
算出開始日 | 1957年3月4日 | 1896年5月26日 |
単位 | ポイント(算出開始日を10ポイントとする) | 米ドル |
構成銘柄数 | 500銘柄(全業種) | 30銘柄(輸送・公共事業除く) |
選定基準 | 米国企業であること/時価総額が一定以上/4四半期連続で黒字/株式に流動性がある、など | 米国企業であること/企業の成長性/投資家からの関心の高さ、など |
算出方法 | 時価総額加重平均型 | 株価平均型 |
歴史が古いのはダウ平均株価の方。ダウ平均株価は、日経平均のような存在ですが、日経平均が225社で構成されているのに対し、ダウ平均株価は30社に厳選されているという違いがあります。
米国に影響力がある超大企業が集められており、景気の感度を図る上では有効です。ただし株式市場の実態を映す鏡としては使えません。
見ての通り30社しかないことに加え、計算方法は30社の株価の単純平均(実際にはちょっと違うのですが)になっているからです。
一方のS&P500は銘柄数が500社と多く、計算方法は「時価総額加重平均型」を採用しています。より規模の大きい企業が、より大きな割合を占めるようになるので、市場の様相がそのまま反映されます。
なおインデックス投資は、その市場(国あるいは世界)に丸ごとベットする投資手法です。そんなわけで、米国の株式市場をより的確に表しているS&P500が多く採用されています。
S&P500の成り立ち
S&P500の正式名称は、「スタンダード・アンド・プアーズ500種指数」です。もともとスタンダード&プアーズ社が算出していたことで、この名前がついています。
S&P500の起源は1923年に遡ります。スタンダード&プアーズ社の前身であるスタンダード・スタティスティクス・カンパニーが、26業種233社を含む複数の指数を開発したのが始まりとされています。
以降、算出方法の改善が進み、現在の500社の形になったのは1957年のこと。1957年3月4日が基準日となっており、この時点の時価総額を10ポイントとしています。
それから60年以上にわたり第一線で活躍し続け、10ポイントでスタートした指数は、4,000ポイントを超えるようになりました。
S&P500が世界で最も注目される理由
世界の投資家が一番注目している株価指数がS&P500です。なぜそれほどまでに大きな影響力を有しているのか、2つの点から説明したいと思います。
注目される理由①:米国の80%、世界の50%超を占める
米国は世界一の経済大国。世界をリードしている存在ではありますが、経済(GDP)の規模でぶっちぎりの1位というわけではありません。
しかしながら株式の世界の米国は、文字通りぶっちぎりの覇者。全世界の株式時価総額のうち、米国企業が占める割合は50%を超えています。
そして、米国全体の株式時価総額のうち、S&P500銘柄が占める割合は80%ほどです。
つまり、全世界の時価総額のうち、ほぼ半分はS&P500の銘柄が占めているのです。全世界株式インデックスに投資をしても、半分はS&P500に投資していることになります。
やや乱暴ですが、押し並べて言うと、世界中の投資家一人ひとりが保有している株式の半分はS&P500ということになります。当然ポートフォリオのリターンは、S&P500のリターンに大きく左右されます。
加えて、世界中の株価は、S&P500の推移と相関があります。S&P500が伸びれば日本株も新興国株も伸び、凹めば同じような推移をたどるでしょう。
これほど影響力がある株価指数は、S&P500を置いて他にはありません。ゆえに注目を浴びるのです。
注目される理由②:長い歴史に裏打ちされた高いリターン
S&P500が今の形になったのは1957年のこと。それだけでも60年以上の歴史がありますが、前身からカウントすると、100年以上の歴史があります。
激動の20世紀から21世紀を走り抜け、数多くの歴史的なイベントから、何度も大暴落をしました。世界恐慌や第二次世界大戦も経験しています。
時期 | イベント | 下落幅 |
1929年8月~1932年6月 | 世界恐慌 | −86% |
1937年2月~1938年3月 | −53% | |
1968年11月~1970年6月 | −33% | |
1972年12月~1974年9月 | −46% | |
1987年8月~1987年11月 | ブラックマンデー | −34% |
2000年3月~2002年10月 | ITバブル崩壊 | −49% |
2007年10月~2009年3月 | リーマンショック | −56% |
2020年2月~2020年3月 | コロナショック | −34% |
しかしながら、その全てを乗り越え、最高値を更新し続けています。S&P500の強さは歴史が証明しているのです。
そしてS&P500の年平均リターンは、ざっくり10%程度。複利効果で約7年ごとに資産が倍になる計算です。(あくまで理論値です。そうならない時期もありますが、それ以上になる時期もあります)
1,000万円をS&P500に突っ込んで放置したら、
7年後:2,000万円
14年後:4,000万円
21年後:8,000万円
にもなります。
インフレ率を考慮すると、年平均6〜7%程度のリターンになりますが、それでも十分すぎるリターン。この結果が、米国株投資家にとって最大の拠り所となっています。
500社の選定基準は?
S&P500は米国を代表する大手500社で構成されています。ですが、具体的にどのようなロジックで選定されているのかは、意外と知られていないのではないでしょうか?
S&P500に含まれる産業の比率の決まり方
S&P500は、GIGS(世界産業分類基準)で定められている各産業に対し、米国内の株式市場の時価総額の大きさ反映した配分を割り振っています。
そして各産業の主要企業をカバーできるように銘柄を選定します。
GIGS(世界産業分類基準)とは、あらゆる産業を体型的に分類したものです。スタンダード&プアーズ社と、これまた指数算出を生業としているMSCI社が共同で開発しています。
というわけで、米国内の各産業の趨勢がS&P500に反映されています。これが米国の株式市場の生態系であり、自然な形ということですね。
もしITセクターの占める割合が大きければ、それだけITの産業が伸びた結果ということになります。
GIGS詳細はセクター分類の解説記事をチェックしてみてください。
S&P500銘柄の4つの採用基準
各産業の中で、採用される銘柄は次の4つの基準をクリアする必要があります。(詳細は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社のサイトをチェックをどうぞ)
採用基準①:米国企業である
その名の通り、米国に本社がある、米国籍の企業であるということです。
採用基準②:時価総額が131億ドル以上
時価総額は、「株価×発行株数」で求められます。
時価総額はその企業が稼ぐ利益の大きさ(将来の期待も含む)を反映しています。時価総額が大きいということは、必然的に大企業ということになります。
この条件は徐々に厳しくなっていっています。すでに時価総額1兆円超えの選ばれし者しか、ノミネートされませんが、今後もさらに厳しくなると予想されます。
採用基準③:株に流動性があり、浮動株が発行済株式総数の50%以上
「浮動株」とは、個人投資家や機関投資家が保有していて、市場で日々売買されている株式のことです。
もし創業者が8割の株式を保有していたら、浮動株は2割しか取引されないことになります。日本の場合は、「株式の持ち合い」と言って、仲の良い企業同士で株式を持ち合っていることもよくあります。
そのような取引量の少ない銘柄は排除されるようになっています。
採用基準④:4四半期連続で黒字利益を維持している
4四半期なので、1年間黒字を維持していなければならない、ということになります。財務健全性に問題がある企業は、S&P500から排除されるようになっています。
そのため、必ずしも売り上げが大きかったり、時価総額が大きかったりしても、S&P500に採用されないケースはあり得ます。
S&P500は必ずしも500銘柄ではない?
実は、S&P500の銘柄数は500を超えていることがあります。例えば、505銘柄になったりしています。
例えば、Googleの親会社であるAlphabetは、「GOOG」「GOOGL」という2つの銘柄が、S&P500に組み込まれています。
両者の違いは、議決権の違いです。「GOOGL」には通常通り、1株に対し1票の議決権がありますが、「GOOG」には議決権がありません。
このようなクラス分けされた銘柄が入っていると、全体の銘柄数が500を超えることになります。
算出方法は「時価総額加重平均型」を採用
S&P500に含まれる500銘柄は、均等に0.2%ずつ配分されるわけではありません。
「時価総額加重平均型」を採用しており、時価総額が大きい銘柄ほど、大きな割合を占める計算になっています。
結果として、上位10社だけで全体の約30%を占めるようになります。歪に感じるかもしれませんが、これが米国株式市場の縮図なのです。
順位 | S&P500 | 業種 | 構成比率(%) |
1位 | Apple Inc. | 情報技術 | 6.17 |
2位 | Microsoft Corp | 情報技術 | 6.08 |
3位 | Amazon.com Inc | 一般消費財 | 3.64 |
4位 | Facebook Inc A | コミュニケーションサービス | 2.28 |
5位 | Alphabet Inc A | コミュニケーションサービス | 2.19 |
6位 | Alphabet Inc C | コミュニケーションサービス | 2.09 |
7位 | Berkshire Hathaway B | 金融 | 1.43 |
8位 | Tesla, Inc | 一般消費財 | 1.39 |
9位 | Nvidia Corp | 情報技術 | 1.38 |
10位 | JOHNSON & JOHNSON | ヘルスケア | 1.25 |
AppleやMicrosoftと、時価総額が500番目の銘柄とでは、市場に与える影響が全く違います。これらを等価にしてしまったら、それはそれで違和感がありますね。
時価総額の大きさを反映させるので、結果として伸びる銘柄はどんどん割合が大きくなって行き、衰退する銘柄は勝手に縮小して行きます。
この自浄作用が「時価総額加重平均型」の最大のメリットです。S&P500に丸っと投資するだけで、勝手に流行り廃りによる取捨選択をしてくれるわけです。
なおリバランスは四半期ごとに年4回行われています。ここで銘柄の入れ替えが行われます。
時価総額加重平均型は、世界中の株価指数で広く採用されています。インデックス投資の算出方法は、ほとんどがコレ。
時価総額加重平均型と株価平均型の違いを解説した記事では、具体例も交えて計算方法をわかりやすく解説しています。
【大人気】S&P500に投資できる投資信託&ETFを紹介
S&P500が世界中の投資家に注目され、愛されている理由が、なんとなくわかってもらえたんじゃないかなと思います。
最後に肝心の、日本に住む我々がどのような商品を通して、S&P500に投資できるかを解説して行きます。
選択肢には、「投資信託」と「ETF」があります。
S&P500に投資をするなら、どちらを選んでも中身は全く一緒なのですが、投資信託とETFでは構造の違いから、多少の違いが出てきます。
投資信託 | ETF | |
信託報酬(経費率) | 安い | さらに安い |
値動き | 1日1回 | リアルタイム |
配当金の再投資 | 自動 | 基本的に手動 |
細かい話は蛇足になるので、このくらいにしておきますが、完全にほったらかしたい人は「投資信託」、より柔軟に立ち回りたい人は「ETF」を選びます。
ただS&P500に投資するなら、どっちを選んでも何ら問題ありません。
S&P500に連動する投資信託
銘柄 | 信託報酬(経費率) |
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.0968% |
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド | 0.0938%程度 |
どちらを選んでも大丈夫ですが、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」は、取り扱いがない証券会社もあります。「eMAXIS Slim 米国株式」は基本どこでも買えます。
つみたてNISAやiDeCoでも選べるので、優良商品であることはお墨付きです。
S&P500に連動するETF
銘柄 | 信託報酬(経費率) |
バンガード・S&P 500 ETF(VOO) | 0.03% |
iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(IVV) | 0.03% |
SPDR S&P 500 ETF(SPY) | 0.09% |
ETFでは「SPY」が最も歴史が古く、最も純資産総額が多い(つまり人気)銘柄となっています。
ただ信託報酬は「VOO」「IVV」の方が低いので、これから投資する人はこっちを選びましょう。